中編小説 | ナノ



最後の恋 B
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ウェストン校・・・・・・忘れたい、しかし絶対に忘れてはならない、忘れることの出来ない過ちを犯した場所。

今でも鮮明に蘇る、あの日の血なまぐさい場面。それは、6年間の思い出をすべてかき消してしまいそうなほど凄まじい記憶だった。男は乱れ始める呼吸に胸をおさえる。



『しかも監督生だったって言うじゃない。驚いたわよォ』


「・・・やめてくれないかな・・・っ」


『町の娼婦の間でもっぱら噂になってるわよ。こんな辺鄙な場所で若いエリートが世捨て人してるってね。ねぇん、何でこんな生活してるの?本当はお金も地位もあるんでしょ?』


「・・・っ、やめろって!」




更にタブーに突っ込もうとするオンナのドレスを乱暴に掴み、無理矢理自分から剥がす。バリバリとレースが破れる音が響き、オンナが悲壮な顔をしてドレスをたぐっている。

『何すんのよ!借り物なのに!』

だんだん速く浅くなる呼吸と割れるような頭痛。体を支えるのがやっとなほどの苦しさ。何度もこの息苦しさは経験したが、死を意識するほどの苦しみは始めてだった。


「・・・・・・っは、かえっ、てよ」


『・・・何よ!放校された落ちこぼれのくせに!』



椅子に伏して喉を押さえる男に捨て台詞のように吐き捨て、女はギリギリと歯を軋ませて無惨に破れたドレスをまとわりつかせながら走り去る。

取り込みすぎた空気が逃げない。喉に何か詰まってしまったように息ができない。四肢が痺れ、眩暈とともにだんだん身体が冷えていく。



『ユーリア・・・っ』



苦しい時はいつもうわの空でこの名を呼ぶのが男の癖だった。しかし、あの娼婦の影がちらつき、あんなに狂おしいほど愛した女の顔が消えていく。

すべて自分が蒔いた種だというのに、どんなに時を重ねても消えない後悔の念。償いきれない罪。そして徐々に忘れていく二度と会えないであろうユーリアの笑顔。

・・・もう何もかも捨ててしまおう

衝動的にアトリエを飛び出し扉に手をかけた、その時だった──────








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