中編小説 | ナノ



最後の恋 @
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・・・・・・・・・・・・数日前。






『妊娠しています』



無機質な病室で告げられた医師の言葉に、私はこれ以上なく驚いた。しかし同時に、えも言われぬ幸福感が満ちて・・・。
隣にいた母親の蒼白な顔を見て、その想いにそっと蓋をしたけれど。




『・・・堕胎しなさい』




家に帰り事を告げると、重苦しい空気の中最初に口を開いたのは父だった。昔から厳格な性格で、格式高い我が家を一人背負って立つ・・・そんな人だ。家系に一人でも私生児を抱える者を出したくない。その一心だったことだろう。
しかし、その一言は深手を負う私の心をさらに深く抉った。


「嫌です」


・・・これが私のはじめての反抗だった。
たったひとつ、先輩が私に残したもの。それすら手放すなんて・・・私には考えられなかった。


『だったら子供の父親を連れてきなさい』


「・・・できません」


『話にならんな。・・・俺は許さんぞ』



父はそこまで言って部屋をあとにする。
母はその横で泣き崩れたままで・・・。
女同士だからわかってくれる、とか
そんな事を期待していたわけじゃない。
親不孝者だって分かってる。
分かってるけど・・・




「お母さん、ごめんね」


『・・・・・・』



私はいたたまれなくなり、
未だ泣き止まない母を置いて
自室に戻っていった・・・・・・











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