中編小説 | ナノ



最後の恋 @
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両親の間を飛び交うやりとりを階下に聞きながら、ユーリアはひとり静かにベッドに身を横たえる。強く感じる吐き気と眠気。自分の身体ではないようなえも言われぬ虚脱感の中、これもあと数ヶ月の我慢と自分を励ます。


『許すわけがないだろう!』


はっきりと聞こえる、父の悲鳴にも似た怒号に、一層強まる吐き気。


『どこのどいつだ・・・娘を孕ませたのは!』



耳を塞ぎ、身体をできる限り丸める。
ユーリアは渦巻く意識の中、逡巡する。一体どこで自分は道を踏み外してしまったのか。名門貴族の長女に生まれ、恵まれた容姿に類稀なる才能を身に余らせ、駆け抜けた少女時代。特例で入学することが出来た名門寄宿学校。
・・・多くのことを学び、そして初めての恋をして・・・

目を閉じればいつも鮮明に浮かぶのは、ある男のシルエット。


「バイオレット先輩・・・」


人殺しという大罪を犯し、姿を消した男の影を思い出す。
あの日・・・運命に翻弄され、結局叶うことのなかった初恋。きっとこの先も、この人以上に愛することのできる人なんて現れる事はないだろうとユーリアは思う。

人を殺して学園を追われると彼の口から聞いた時、何故か妙に冷静だったことを覚えている。彼には自分しかいないと・・・それはもう、ある種の付きまとう呪いのような恋だった。
しかし、彼はある日の明け方、誰にも行先も告げず煙の様に突然去っていった。・・・ユーリアにも行先は分からないまま・・・
すぐに学校を辞め、先輩を求めてすべてを捨てようとした・・・
・・・その矢先だった。



突然の吐き気とめまい。

思い当たる節は何度もあった。
ふたりは学園で禁じられた恋に堕ちて
幾度となく逢瀬を重ねて・・・
・・・いつ出来たって不思議ではなかった・・・。










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