短編小説 | ナノ



Catch me if you can
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『・・・マリア、やっとつかまえた・・・!』




膝に手をついて激しく呼吸する先輩をよそに
ぷいっと横を向く




「・・・・・・」




『マリア、あのな』




「・・・先輩はレジーナみたいな子が好きなんでしょ」




先輩は一瞬困ったような顔をしたが
すぐに私に向き直る。




「私あんなに可愛くないし、お淑やかじゃないし・・・細くないし胸も大きくないし・・・魅力ないし・・・」




『マリア、聞いてくれ』





・・・本当はね、もう
あんまり怒ってないの。


あんなに必死な形相で私に
振り回される貴方を見てたら
なんだか嬉しくて。


だからこれは私のわがまま。


いつも甘い言葉をたくさんくれるけど
今日だけはかっこつけないで
貴方の素直な言葉、私に聞かせて?





『好きだ、好きなんだよ、お前だけ・・・』




「・・・・・・」




『とびぬけて美人じゃない、胸も大きくない。じゃじゃ馬で俺をいつも振り回して・・・』




「・・・・・・」




『そんなお前が可愛くてどうしようもないんだよ』






珍しく顔を赤らめて
私を強く抱きしめてくれて・・・
それだけでこれが本心なんだってわかる


いつも聞かせてくれる着飾った言葉より
何倍も私をドキドキさせてくれる




「本当?」




『当然だろう・・・本は本だ。俺が愛してるのはお前だけだ』




こんな言葉が聴けるなんて
たまには喧嘩もいいかもしれない、
なんてひとり
あなたの唇を受け入れながら思う





『あの本はもう捨てる。お前がそう望むならそうしよう』



「先輩・・・」



『そうだ・・・ロレンスにやろうか』




お互い手を取り合い笑いあって。
そんな何でもない、
だけどかけがえのない雨上がりの夏の日。







end





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