短編小説 | ナノ



I wanna be ya dog
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その日の夜・・・


空中庭園の扉を開けると
すぐに先輩の姿が目に入った



「・・・先輩」


『・・・来たね』



強風に煽られバタンと後ろの扉が閉まる
コートを風に靡かせながら・・・
ゆっくりと近づいてくる先輩



『レドモンドのお世話は終わったの?』


「はい・・・」


『昼間の・・・何?』


「・・・すいません」



先輩の表情はどこまでも冷たくて・・・
足がすくんで動けない



『分かってないよね・・・マリアは』



いつもと違う先輩の雰囲気に後ずさり
でも後ろはすぐに扉で・・・もう下がれない。


・・・そっと私の右手を取り
私の手の甲に優しいキスを落とす先輩



「あ、あの、悪気はなくて・・・ただ」


『君さ』



安心したのもつかの間・・・



「あ・・・・・・っ!」



薬指に犬歯で噛み付かれ、
鋭い痛みに悲鳴を上げる


ゆるゆると浮かび上がる赤い雫が
爪の先からこぼれ落ちて



『身も心も・・・この血も全部、ボクのモノだと思ってたんだけどな・・・』



「う・・・・・・・・・っ!」



私の血で濡れる唇は相変わらず
綺麗な弧を描いたまま
後ろ髪を乱暴にぐしゃりと鷲掴みにされ
強制的に上を向かされて・・・

いつも優しくて穏やかな先輩だけど
やっぱり男だから力が強くて

不機嫌な時は嗜虐的になることも
分かってたはずなのに
今更悔やんでももう遅いのに



「ごめん・・・なさい・・・わざとじゃ・・・」


『ん?』



鋭い瞳が私の心を刺す
トーンの低い声がいっそう残酷さを増長して
私の胸を締め付けて
息が上手くできない








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