短編小説 | ナノ



I wanna be ya dog
2/5








とある日の昼下がりの白鳥宮。


今日はつけまつげを失くして
表に立てないモーリスの代わりに
私がレドモンド先輩のお世話係。


バイオレット先輩の隣に居られなくて
ちょっとだけ寂しいけど・・・・・・



「髪くすぐったーい!」


『はは、ヘタクソ』



お茶をいれる私の肩越しに
レドモンド先輩が私の手元を覗く


紅い装飾が綺麗なカップに
なみなみと紅茶を注ぐとほわっと湯気が立つ



『ん、モーリスの方が上手いな』


「ひどい!頑張ったのにー」



レドモンド先輩ときゃっきゃと
やりとりを続ける
元々レドモンド先輩とは気が合うのか
人見知りな私でも彼との話は苦ではない


・・・ふと気になってソファに座ってる
バイオレット先輩を見遣る



『・・・・・・』



・・・・・・?
いつも通りグリーンヒル先輩の向こう側を
描いてる・・・ように見えるけど・・・



『・・・・・マリア』


「!・・・はい!」



不意に呼ばれて私は
何の気なしにバイオレット先輩の元へ駆け寄る
・・・あれ、やっぱり先輩、何も描いてない・・・



「どうしましたか?」



サラサラと先輩の左手の木炭が
紙の上を滑ると
綺麗な筆記体が記されていく



「バイオレット先輩?」


『口開けて』


「?・・・あ・・・・・・・・・むぐっ!!」



言われたとおりに口を開けると
くしゃくしゃ、と文字の書かれた紙を丸め
強引に私の口の中に押し込む先輩



「ふぇんふぁい!」


『・・・帰る』



ひらりとコートを翻し
白鳥宮を出ていく先輩

・・・今すぐ後を追いたいけど、今日はできない。



『どうしたんだ?アイツ』



みんな呆気にとられた様子で
こちらを見ている



「・・・ふあぁ」


『・・・出さないと飲み込むぞ』



ブルーアー先輩が呆れ顔で言い放つ

もしかして・・・先輩、嫉妬した・・・?



『はは!バイオレットにも可愛いところがあるじゃないか』



・・・可愛いなんてもんじゃない。
ご機嫌ななめな先輩は・・・



〈Hanging Garden 12am〉

空中庭園に、午前12時。


シワシワの紙を見つめながら
ゾクリと背筋が凍るの感じた










「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -