紅い秘事
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赤寮に着くと、レドモンド先輩は門の前で待っててくれた。
私が走ってくるのを確認すると、優雅に近づいてきてくれて。
『わざわざすまないな』
「とんでもありません。遅くなってしまって…」
『いや、いつも見やすくて助かるよ。』
心の中でちょっとガッツポーズ。
『あ…っと、マリア。ちょっと時間あるか?ちょっと確認したいことがあってな』
消灯まで時間はもう少しある。
早くバイオレット先輩の元に行きたいが、仕事を疎かにするわけにはいかない。
「構いません」
『ここじゃ寒いだろう。俺の部屋においで』
気のせいかな?レドモンド先輩が少しニヤリと笑った気がしたけど、
いつものことかもしれない。
あまり気にせずレドモンド先輩の後をついていく。
赤寮は薄暗いろうそくの灯りでも分かるくらい豪華絢爛で、乙女心をくすぐられる。
『どうぞ。』
「失礼します」
レドモンド先輩の部屋はきれいに片付けられていて、清潔感が漂っている。
促されるままに、ソファに腰かける。
仕事中だったようで、デスクの上は辞書やら紙類が散らばっていた。
『紅茶でいいかい?』
「あ、いえ、お気遣いなく」
『遠慮するなよ。ここは俺たちしかいないんだ』
じゃあ…と、レドモンド先輩が淹れてくれた紅茶を申し訳なくすすりながら、再び資料に目を通す。
時々レドモンド先輩の涼やかな視線を感じつつ、着々と資料を訂正していく。
ひととおり終わったのは、まもなく消灯の時間という頃だった。
『悪かったな、こんな遅い時間まで』
「いえ…じゃあお暇します」
ソファを立とうとして、ふと手を掴まれる。
驚いてレドモンド先輩の方を振り返ると、先輩もこっちを食い入るように見ていて。
視線の先は…
『そんなに慌てなくても。寮監には俺から説明しておくから、ゆっくりしていくといい』
「そんな、申し訳ないです!もう消灯の時間ですし、いつまでも出歩くわけには…」
それにレドモンド先輩には悪いけど、一刻も早く寮に戻りたい。だって、、、
『バイオレットが待ってるから?』
「!?」
耳を疑った。もしかして…
「…え?」
『俺が知らないとでも思ったか?』
スッと顔に手を差し伸べられ、思わず身体が強張る。触れられたのは、唇。
『付いてるよ』
慌てて確認する。バイオレットのリップ。思わず青ざめる。
「これは…あの」
言い訳ができない。
『この色は…バイオレットしか似合わないな』
腕を引っ張られ、リップを舐めとるようにキスをされる。その感触に思わず身体が反応しかけて、あわててレドモンド先輩の肩を押し返した。
「んっ…レドモンド…先輩…!」
扉を開けて出て行こうとしたけど、追いかけてきたレドモンドに後ろから勢いよく閉じられてしまう。振り返ったら、またキス。今度はねっとりと舌を入れられて、驚いて目を見開く。
「ん……ふっ…や………やめ……!!」
『…キスだけで感じるんだな…ヤラシイ女』
バイオレット先輩のキスでこんな淫らな身体になってたなんて。ショーツの布で吸いきれなくなった蜜が太ももを伝う。
くやしい。くやしい。
バイオレット先輩以外のキスで感じる身体が。
「だ…ダメです……!!」
『バイオレットに躾けられたのか?』
扉はレドモンド先輩に押さえ付けられてビクともしない。
力が抜けて、その場にへたり込む。叫ぼうにも声が出ない。
蜜で濡れた脚をとっさにスカートで隠す。
恥ずかしさと恐怖で涙が止まらず、視界が霞む。
「レ……レド………だめ……」
『だめ?いやじゃなくて?』
ブラウスを肩まで開かれ直に胸を弄られる。
無理やり脚を開かされ、レドモンド先輩の長い睫毛の奥にある瞳に見つめられて。
ショーツの上から軽くなぞられ、思わず声が漏れる。
自分の嬌声にハッとして口を抑えるが、頭の上で両手をまとめ上げられ、身動きが取れない。
鎖骨に噛みつかれ、鈍い痛みを感じる。
「ひゃぁ………やだ……やだぁ………バイオレット先輩………たすけて…………」
『…………』
ふと、レドモンド先輩の力が緩み、すっと立ち上がった。
心臓がはね回って収まらない。肩で息をしながら、再び血が巡り始めた手首を抱える。
「はぁ……は…………」
『……すまなかった』
レドモンドがうつむいた隙に、扉を開けて外に飛び出した。
赤寮は寝静まっていて、廊下には誰もいない。
静寂の中、階段を駆け下り傘もささずに紫寮へと駆け戻る。
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