短編小説 | ナノ



目撃者
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見つかったら言い逃れできない状況を分かっているのかこの男は。あわてて先輩の腕をひっぱがそうとするけど、力が強くて外れない。そうこうしているうちに。




『バイオレット先輩!』




ドンドンとノックの音と共に、チェスロックの慌てた声が聞こえた。パニックになって、彼の胸をバシバシ叩いてみる。さすがに先輩も目を開ける。




「マリア…おはよ『バイオレット先輩!オレっす!クリケット大会の準備、先輩だけ遅刻っスよ!!支度手伝いますから、入りますよ!みんなを待たせ………て………えっ?』




まくし立てるチェスロックの言葉が途切れる。
万事休す。
見られた。一気に顔が真っ赤になる。




「あっ!あっ、、、えっと、、、あの、、あの、ね!!!」



『えっ!?は!?お前、、、は!!??』



『忘れてたよ…チェスロック…』





先輩はもぞもぞと動いたかと思ったら、横で硬直してる私に毛布をきちんとかけ直してベッドから這い出る。全く慌てる様子はなくて。





『は…裸!?…ちょ!!先輩!手伝いますって!!』





チェスロックもさっきから顔が真っ赤になってる。裸のままシャワーに向かう先輩を追おうとして、はたとベッドに置き去りにされた私の方に振り返って。




『ど、、、、、どーゆーことだよ…』




どーゆーことと言われましても…こーゆーこと…
開き直った私は、もう笑うしかない。





「うん…また説明する…」




『服着ろよ…目のやり場に困るだろ…
ったく何なんだよ2人して俺をからかってんのかよ…』




『チェスロックータオルとって』




『ウィッス…』





先輩がバスタオル一枚で出てきて、制服を着はじめる。目の前で制服を着ている先輩を見てると、嗚呼、この人は私が憧れたあのバイオレット先輩なんだなと、改めて実感する。





『先輩!もうタイムリミットっす。行きますよ!』





さっきまでベッドでもつれ合ってた彼は、今制服を着て、部屋を出ようとしている。





「行ってらっしゃい、先輩」





毛布にくるまり、ベッドの上から見送る。扉に向かう足を止め、スタスタとこちらに近づいてくる先輩。




『…行ってきます』




片手で顎をすくい上げられて、優しいキス。濡れたままの髪が頬に当たってくすぐったい。
後ろにいたチェスロックはふいっと横を向き、見ないふりをしてるみたい。耳真っ赤だけどね。そのまま先輩は振り返ることなく扉を後にした。





一人先輩の部屋に残された私は、とりあえずベッドから出て服を着る。チェスロックに次会った時…なんて説明しよう。意外だけど・・・なんだか知られたことが嬉しい気がする。でもやっぱり照れる。綻ぶ顔を隠しきれないまま、彼の部屋を後にした。







end







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