短編小説 | ナノ



再び巡り会えたなら
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「バイオレット先輩!!」



間違いない。フードを被った特徴的なシルエット。そして・・・毎日そばで感じていた香り。
最後にあった時と少しも変わらない、憂いを帯びた瞳。


『・・・』


男は立ち止まったが、振り返らなかった。代わりに、男が持っていたグラスが手から滑り落ちる。
ガシャンと派手にガラスが割れる音は、ノイズにかき消された。しかしそれは、彼の動揺を示すのに充分な証拠だった。



ややあって、男が振り返って。

・・・ああ、やっぱり。

私はゆっくりと近づき、何も言わずに男を抱きしめた。不思議と涙は出なかった。
なんだか・・・きっとどこかで、先輩と再び巡り会えることを知っていたような気がする。



「みつけた」


『・・・君は』


「忘れてなんていないでしょう?」



音楽はなお止まる事はなく。
群衆の真ん中で抱き合う私たち。

やっぱり、私の居場所はこの腕の中だった・・・



「先輩」


『・・・』


「会いたかった」


『・・・』



先輩の手がかすかに震えてる。
それでも、私は彼を離すつもりは無い。離したら・・・またどこかに行ってしまうんじゃないか・・・そんな気がした。

先輩は安心したような、どこか悲しげな・・・不思議な表情で私を見てる。



「今まで何してたの?」


『・・・』


「・・・どうして何も言わないの?」


『・・・』



「ねぇ、先輩・・・」











『にゃはっ!お二人さん!』



先輩が弾かれたように顔を上げ、つられて私も声の主を見遣る。

そこには、優しそうな顔をした、淡い紫色の髪の男が立っていた。さっき・・・どこかで見たような・・・



「占い師の・・・・・・」



『ブラバットね』



つかつかと私たちに歩み寄る占い師。先輩がすっと、私の肩を押して遠ざける。
俯く彼の表情を伺うことが出来ない。



「先輩・・・・・・」



『バイオレット君。お客さんに手を出すのはご法度だよ〜』



『・・・』



先輩の肩をトントンと叩き、何かを耳打ちする。先輩の顔に・・・一層影が落ちる。



嫌な、予感。














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