短編小説 | ナノ



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落ちてしまいそうな感覚に、彼の白いシャツをぐっと掴む。深い快感の深淵が垣間見えて、えも言われぬ恐怖を覚える。これ以上を知ってしまったら私は・・・


「グレゴリー・・・っ・・・こわい・・・っ」

『・・・・・・』


すっと離れる唇。キスだけでおののく自分が嫌になるほど情けない。彼は少しうつむいてて。彼の濡れた唇が艶っぽくて。自分から怖いと言っておいて・・・すこし名残惜しいなんて、言えない。


「ごめんなさい・・・っ」

『・・・・・・・・・』


そのまま強く抱きしめられ、少し驚く。私の肩に顔を埋める彼。


『・・・ごめんね』

「・・・えっ?」


彼からの謝罪。
どうして?悪いのは私なのに。
彼の身体は熱くて、愛おしくて。私も強く抱きしめる。

表情は全く伺えないけれど、何となく・・・彼が泣いているような気がした。


「どうして」

『大好きだよ』


言葉を遮るように紡がれた愛の言葉。初めて聞いた・・・彼の震える声。いつも素っ気ない彼からは想像出来ないほど切なくて。


「・・・私もです・・・」

『マリア』

「はい・・・」

『・・・また会えた』

「!・・・」

『もう、会えないと思ってた』

「・・・っ」


数年前・・・運命に引き裂かれた私たち。
彼が去った後、私も後を追うように学園を後にした。彼のいない世界なんて私には虚しいだけだった。あれから数年間・・・どれだけ貴方を求め、探したか。


もうこの手を離したりしない。
強く繋いだ手に涙がぱたぱたと落ちる。


「・・・もう離しません」

『・・・マリア』

「愛してます」

『マリア』

「続き・・・してください」


私から彼に口付ける。彼の眦にも一筋・・・涙が伝った跡があった。


『もう絶対に君を傷つけない』

「はい」

『大切にするからね・・・』


1mmの隙間もないほど繋がって
逝く時もずっと一緒よ
すべて貴方に捧げたから
・・・この指輪に誓って







end







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