短編小説 | ナノ



remplissage
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「・・・先輩。」

ヴェールがかかったような薄闇の部屋の中、ベッドの前に立ちすくむ。身につけているのは、極薄い羽衣のような下着だけ。包まれている身体は今きっと薔薇のように紅く上気しているだろう。


『・・・おいで』


ベッドの上から手招きする声。心地よい低音が麻酔のように響いて。私は吸い寄せられるように・・・半ば声に心酔するように、ベッドに歩み寄る。ギシリと軋むスプリングが一度私を現実へと引き上げる。


嗚呼、これから
私は・・・


『・・・』


バイオレット先輩が手を差しのべる。おず、とその手を取ると、指の光るリングに唇が落とされて。いつもよりナチュラルな唇が、いやに妖艶で。伏せられた瞼も長いまつげに彩られて。いつもと違う雰囲気に何だか涙が出そう。


『緊張しないで』

「・・・はい」


とは言っても・・・肩に入った力が抜けなくて、奥歯もぐっと噛み締めてて、何だか疲れてしまいそうなほど。誰にも見せたことの無い肌。薄い衣の内側が見えてしまわないように腕で守るように覆う。しかし・・・
くい、と手を引かれ、バランスを崩し先輩の胸にすがりつく。


「きゃっ!」

『・・・・・・』


ごく近い距離で見つめ合って・・・2秒・・・3秒。
永遠にも感じられる瞬間の中で、私は先輩の瞳に強い光を見出した。吸い込まれそうな・・・深い紫炎。

そっと触れられ、頬にキスを落とされる。きゅっと握られた片手から伝わる愛。全てが優しくて、じんわりと温かく私を溶かす。そして先輩の視線は少し下り・・・唇に、キス。


「・・・っ」

『じゃあ・・・はじめるね』

「・・・はい」


その言葉を皮切りに、先輩の手が私の後頭部に回される。そのまま、キスは何度も角度を変えて。

少しずつ肩の力が抜けるのを感じる。惚けたように唇が半開きになるのを彼は見逃さなかった。


「ん・・・・・・・・・・・・」


ねっとりと舌が差し入れられ、絡まり合う。身体がカッと熱くなって、気づいたら涙がぽろぽろと溢れ出て。私のカラダ・・・どうなっちゃうんだろう。四肢の感覚が虚ろになっていく。


「バイオレット先輩・・・」

『・・・・もうボクは君の先輩じゃない』

「・・・っ」

『グレゴリーって・・・呼んで』







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