短編小説 | ナノ



悲しい恋をする君に
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彼女の実家は自宅から一時間ほど
馬車は軽快な音を立て走っていく





『知らせもなく申し訳ありません。マリアさんの学友のミッドフォードと申します』



ややあって出てきた彼女の母親らしき人に
名前を告げると、すぐにマリアに
取り次いでもらうことができた。




彼女の家は特段裕福な家という訳でもなく
家は地主と言っていたから
言うなれば中流階級であろう




「・・・ミッドフォード君」



『君が心配で訪ねた。変わりはないか?』



出てきた彼女は以前より
覇気が感じられなかった
すこし痩せたようにも見える



「ええ。何も変わってないわ」


『そうか・・・』



「・・・上がる?」


いや、と断ろうとしたが
まだ聞きたい話もあったので
言葉に甘えることにした



『すまない。初めて訪ねたというのに』


「ううん・・・」



出された紅茶を啜りながら部屋を見渡す
至るところに華やかな刺繍の施された
額やドレスが飾ってある



『全部マリアの作品なのか?』


「・・・うん」


『ふぅん・・・』



女の趣味はよく分からないが
非常に美しいということだけは分かる


それに彼女はどうやら
心を開いてない人間とはあまり話さないようだ
どこかあのバイオレット先輩に似ていると思う


一向に話が進まずしびれを切らした俺は
俯くマリアに本題を切り出した



『何故学校を辞めたんだ?』


「・・・」


『今は何をしているんだ?』


「・・・・・・」



無言の彼女
正直、女心というのは全然わからない
紫寮にいた彼女の考えていることは特にだ



『バイオレット先輩のせいか?』





「・・・これだから緑寮の人間は嫌いなのよ」



ボソリと彼女が何か呟いたが
聞き取れない。







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