最後にあった時と少しも変わらない
相貌も、語り口も・・・この気持ちも
やっぱり神様っていると思う
『Would you marry me?』
丁寧にのべられた言葉から
再び紡ぎ出される
『yes』
これから先の未来は
2人で空白を埋めるように・・・
*
「・・・先輩。」
ヴェールがかかったような薄闇の部屋の中、ベッドの前に立ちすくむ。身につけているのは、極薄い羽衣のような下着だけ。包まれている身体は今きっと薔薇のように紅く上気しているだろう。
『・・・おいで』
ベッドの上から手招きする声。心地よい低音が麻酔のように響いて。私は吸い寄せられるように・・・半ば声に心酔するように、ベッドに歩み寄る。ギシリと軋むスプリングが一度私を現実へと引き上げる。
嗚呼、これから
私は・・・
『・・・』
バイオレット先輩が手を差しのべる。おず、とその手を取ると、指の光るリングに唇が落とされて。いつもよりナチュラルな唇が、いやに妖艶で。伏せられた瞼も長いまつげに彩られて。いつもと違う雰囲気に何だか涙が出そう。
『緊張しないで』
「・・・はい」
とは言っても・・・肩に入った力が抜けなくて、奥歯もぐっと噛み締めてて、何だか疲れてしまいそうなほど。誰にも見せたことの無い肌。薄い衣の内側が見えてしまわないように腕で守るように覆う。しかし・・・
くい、と手を引かれ、バランスを崩し先輩の胸にすがりつく。
「きゃっ!」
『・・・・・・』
ごく近い距離で見つめ合って・・・2秒・・・3秒。
永遠にも感じられる瞬間の中で、私は先輩の瞳に強い光を見出した。吸い込まれそうな・・・深い紫炎。
そっと触れられ、頬にキスを落とされる。きゅっと握られた片手から伝わる愛。全てが優しくて、じんわりと温かく私を溶かす。そして先輩の視線は少し下り・・・唇に、キス。
「・・・っ」
『じゃあ・・・はじめるね』
「・・・はい」
その言葉を皮切りに、先輩の手が私の後頭部に回される。そのまま、キスは何度も角度を変えて。
少しずつ肩の力が抜けるのを感じる。惚けたように唇が半開きになるのを彼は見逃さなかった。
「ん・・・・・・・・・・・・」
ねっとりと舌が差し入れられ、絡まり合う。身体がカッと熱くなって、気づいたら涙がぽろぽろと溢れ出て。私のカラダ・・・どうなっちゃうんだろう。四肢の感覚が虚ろになっていく。
「バイオレット先輩・・・」
『・・・・もうボクは君の先輩じゃない』
「・・・っ」
『グレゴリーって・・・呼んで』
落ちてしまいそうな感覚に、彼の白いシャツをぐっと掴む。深い快感の深淵が垣間見えて、えも言われぬ恐怖を覚える。これ以上を知ってしまったら私は・・・
「グレゴリー・・・っ・・・こわい・・・っ」
『・・・・・・』
すっと離れる唇。キスだけでおののく自分が嫌になるほど情けない。彼は少しうつむいてて。彼の濡れた唇が艶っぽくて。自分から怖いと言っておいて・・・すこし名残惜しいなんて、言えない。
「ごめんなさい・・・っ」
『・・・・・・・・・』
そのまま強く抱きしめられ、少し驚く。私の肩に顔を埋める彼。
『・・・ごめんね』
「・・・えっ?」
彼からの謝罪。
どうして?悪いのは私なのに。
彼の身体は熱くて、愛おしくて。私も強く抱きしめる。
表情は全く伺えないけれど、何となく・・・彼が泣いているような気がした。
「どうして」
『大好きだよ』
言葉を遮るように紡がれた愛の言葉。初めて聞いた・・・彼の震える声。いつも素っ気ない彼からは想像出来ないほど切なくて。
「・・・私もです・・・」
『マリア』
「はい・・・」
『・・・また会えた』
「!・・・」
『もう、会えないと思ってた』
「・・・っ」
数年前・・・運命に引き裂かれた私たち。
彼が去った後、私も後を追うように学園を後にした。彼のいない世界なんて私には虚しいだけだった。あれから数年間・・・どれだけ貴方を求め、探したか。
もうこの手を離したりしない。
強く繋いだ手に涙がぱたぱたと落ちる。
「・・・もう離しません」
『・・・マリア』
「愛してます」
『マリア』
「続き・・・してください」
私から彼に口付ける。彼の眦にも一筋・・・涙が伝った跡があった。
『もう絶対に君を傷つけない』
「はい」
『大切にするからね・・・』
1mmの隙間もないほど繋がって
逝く時もずっと一緒よ
すべて貴方に捧げたから
・・・この指輪に誓って
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あとがき
はい!memoにて語っておりました
〈先輩をグレゴリー呼びする〉を
実践してみました・・・ぬおぉ・・・
これは・・・うん・・・←
放校処分後に再会した設定です!
初めての夜ってことで!
結婚した後か前かどーなのかは
ご想像にお任せします(´∀`*)