悲しい恋をする君に
・・・・・・あの悪夢のような一夜から数週間


俺達が慕った監督生たちが学園を追われ
一時は騒然とした学園も徐々に
落ち着きを取り戻しつつあった。



いなくなった先輩達
それはそれとしてもう一つ
何か欠けてしまったような気がしてならない



『チェスロック』



『んぁ?何だァ脳筋』



『聞きたいことがある』



〈いかなる時も学友に心を配り
愛を以てこれを助けること〉
俺等の秩序たる校則の中の一節

教育、伝統とは何たるかを身を以て知った今
校則に踊らされるつもりは毛頭ないが



『マリアを最近見かけないが』


『・・・あァ』


『心配だ』



チェスロックは何か知っているのか
紫寮の元監督生、バイオレット先輩にいつも
金魚の糞のようにくっついていた女生徒の事を


あの日以降、はたと彼女を見かけなくなった。
ただ学友として彼女のことが気にかかる。



『・・・辞めたぜ』


『な!?』


『先輩追っかけて退学した』


『そんな・・・
彼女にはまだ未来があったはずだ!
どうして人を殺めた重罪人のためにそこまで・・・』



そこまで言って口を噤む
そうだ・・・周囲は誰一人事件のことを知らない
公の場で話すことは出来ない



『知らなかったな・・・』


『・・・』


『なぜそんなこと』


『・・・お前にゃまだわかんねーんじゃねェの』



俺にも分かんねぇわ、と言い残し
苛立ったように踵を返すチェスロック



取り残された俺は一人考える
おそらく・・・彼女はバイオレット先輩に
慕情を抱いていた。
それは誰の目にも明らかだった。



だが何故・・・男ひとりのために人生を棒に振った?
考えても分からない。



彼女とは特別に親しかった訳ではない
だがただの同級生とも違う


いつもバイオレット先輩のそばにいて
バイオレット先輩も彼女を
ただひとり招待客に選ぶほど信頼していた

いつも白鳥宮で顔を合わせていたし
所謂〈P4組〉の一人と言えるくらい
馴染んでいたのは確かだ




悩んでいることがあるなら
学友の俺達に相談して欲しかった

そう思うといてもたってもいられず
数日後、マリアの実家を訪ねることを決めた
せめて少しでも話を聞いてやりたかった




彼女の実家は自宅から一時間ほど
馬車は軽快な音を立て走っていく





『知らせもなく申し訳ありません。マリアさんの学友のミッドフォードと申します』



ややあって出てきた彼女の母親らしき人に
名前を告げると、すぐにマリアに
取り次いでもらうことができた。




彼女の家は特段裕福な家という訳でもなく
家は地主と言っていたから
言うなれば中流階級であろう




「・・・ミッドフォード君」



『君が心配で訪ねた。変わりはないか?』



出てきた彼女は以前より
覇気が感じられなかった
すこし痩せたようにも見える



「ええ。何も変わってないわ」


『そうか・・・』



「・・・上がる?」


いや、と断ろうとしたが
まだ聞きたい話もあったので
言葉に甘えることにした



『すまない。初めて訪ねたというのに』


「ううん・・・」



出された紅茶を啜りながら部屋を見渡す
至るところに華やかな刺繍の施された
額やドレスが飾ってある



『全部マリアの作品なのか?』


「・・・うん」


『ふぅん・・・』



女の趣味はよく分からないが
非常に美しいということだけは分かる


それに彼女はどうやら
心を開いてない人間とはあまり話さないようだ
どこかあのバイオレット先輩に似ていると思う


一向に話が進まずしびれを切らした俺は
俯くマリアに本題を切り出した



『何故学校を辞めたんだ?』


「・・・」


『今は何をしているんだ?』


「・・・・・・」



無言の彼女
正直、女心というのは全然わからない
紫寮にいた彼女の考えていることは特にだ



『バイオレット先輩のせいか?』





「・・・これだから緑寮の人間は嫌いなのよ」



ボソリと彼女が何か呟いたが
聞き取れない。



『すまない。聞こえなかった』


「・・・ねえ」



やっと彼女が顔を上げる





「・・・私がバイオレット先輩の事を好きだったのは分かる?」


『なっ』


いきなり色恋沙汰の話を切り返され
思わず言葉に詰まる



『あ、あぁ・・・それは・・・なんとなく・・・』


「私には・・・学校なんてもう意味ないの」



・・・分からない。
好きだから・・・学校を辞める?
学校に意味が無い?



『分からない・・・』


「貴方には分からないわ」



チェスロックと同じ事を言う
そんなに俺は鈍いというのか?



『分かるように・・・説明してくれないか』


「・・・・・・」


『でないと納得出来ない』



彼女の大きな瞳が揺れる


彼女が抱えているものを知りたい
出来れば救ってあげたい
学校に戻してあげたい


いつしか意地のようなものが
俺の中に生まれて




「・・・あの・・・、ね」



ぼろぼろと泣き出す彼女に
俺はぎょっとする



『マリア!すまない、俺が強引に』



「ほんとに・・・好きだったの・・・」



『・・・!』



「恋人だったの・・・愛し合ってたの・・・!」




愛し合って・・・?



・・・そうだったのか
全く、知らな、かった


マリアは尚もボロボロと涙を流しながら
堰を切ったように胸の内をさらけ出している



「いつも大切にしてくれた・・・夢みたいだった・・・」



俺は過激な言葉を噛み砕くことができず
ただ、聞くことしか出来ない



「もう私には先輩しかいないの・・・!」



嗚咽しながら先輩への思いを
叫ぶマリア


「愛する人がいないなんて・・・学校なんていらない・・・!!」



・・・そうか
彼女にとって先輩は
そんなに大切な存在だったのか



「今も連絡がつかなくて・・・どこで何をしてるのか・・・
もう気が狂いそうなの・・・!」


『・・・・・・』


「先輩・・・きっと深く傷ついてる・・・」


『・・・・・・・・・』



「罪人相手にバカみたいって・・・思うでしょ・・・?」




俺はまだ恋をしたことがない
彼女は俺よりも色んなことを知っているだろう

・・・だから俺には彼女にかけるべき言葉が分からない



「でも・・・っ!」


『・・・・・・っ』



バイオレット先輩のことを想い
悲痛な叫び声を上げる彼女を
放っておくことが出来ず、
夢中で彼女を抱きしめていた



「ミッドフォード君・・・っ」


『・・・泣くな』



バイオレット先輩・・・
見かけたらぶん殴ってやる。



『大丈夫だ。必ずまた会える』


「・・・・・・っ」


『大丈夫・・・』



俺の腕の中で泣き続ける彼女
せめて彼女が泣きやむまでは・・・



『いつでも俺を頼ってくれ』



「・・・ありが・・・と・・・」



彼女の感謝の言葉は
芽生えた淡い気持ちの中に溶けていった。








_____________________
あとがき


はい!初エド夢!!
エドワード、恋を知る。←
仲良くさせて頂いてる相互サイト様に
触発されてしまった・・・!!
そちらのお兄ちゃんが可愛すぎてトゥンクきて
私が書いたらこれな(´・ω・`)←
こんな感じです・・・!ごめんなさい・・・!!


それにしても私
チェスロックを便利使いしすぎだと思うのだ

だって可愛いんだもんチェスロック
いいよチェスロック

では!お目汚し失礼致しました!!



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bkm





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