響様よりリクエストをいただきました作品です!
甘々裏というより苦甘裏です・・・(´;ω;`)
大変申し訳ありません!!
「あっ!だめ・・・!」
『・・・っ』
私の中を満たす彼の熱い情欲。
じんじんとした熱が交わす場所から昇ってきて、気だるく全身を冒す。
達したばかりの彼は、手首で目を覆い隠していて表情は伺えない。
「・・・はぁ、・・・っ」
『ん・・・』
全身の力が抜けて彼にもたれかかると、待っていたかのように背中に腕が回されキスを施される。
奥に溜まる情欲が少しずつシーツに伝い落ちる。それでも抱きしめられている身体は熱を逃がさない。
「・・・ね、ねえ・・・」
『・・・・・・・・・・・・』
*
───やっぱりこの男が考えていることはよく分からない。
私は彼への告白の返事が聞きたくてこの部屋に来たのに、気付けば雰囲気に流されて一線を超えてしまっていた。
普段は飄々としている彼のオトコの一面を見た気がして、私はあまりのギャップに軽いめまいを覚える。
「バイオレット・・・」
『・・・・・・』
乱れたシーツに飛び散った様々な体液。肩で息をする彼の少し開いた唇。
はじめは彼が上位だったはずなのに、気付けば私が彼に跨っていた。ベッドの上の全てが物語るのは、私たちの行為の激しさ。
今更恥ずかしさがこみ上げてきて、真っ直ぐに彼の顔を見ることが出来ない。
「・・・あの、シャワー・・・浴びてくる、ね・・・」
何も言わない彼にいたたまれなくなり、逃げようとする私の腕を彼が掴む。
『・・・も少し待って』
「・・・えっ?」
ようやく見えた彼の瞳はいまだギラギラと光って見えた。
私の中で少しずつ彼の熱が蘇るのを感じる。
彼が私の手にキスをしながら、微かに笑った。
「あっ・・・バイオレット・・・!?」
『・・・もう一回・・・できる?』
*****
「あ、あのっ!」
『・・・・・・何』
「私・・・あなたが好きなの・・・!」
───同じ時期に入団した上に同い年だった彼とは、はじめは見かけたら挨拶をする程度の仲だった。
ずっと彼のことが気になっていた。
いつも涼やかな彼だけれど、本当は友人思いで優しく、いつも自分以外の誰かを気にかけている繊細な人だった。
そんな彼の本性を知って、恋に落ちるにそう時間はかからなかった。
立場上、私より高位な彼にやっとの事で思いを告げられたのは、今日の限定集会のあとの事だった。
『・・・・・・・・・・・・』
彼は突然の私の告白に言葉をなくしていた。私が彼を呼び止めたのは誰もいないステージ裏の廊下。一歩外に出ればみんな忙しく働いている。
緊張に張り詰めた空気の中、ひたすら彼の返答を待つ。
『・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・」
早く何か言って・・・!
私がぐっと目を閉じ祈っていると、ややあって小さく言葉が返ってきた。
『・・・そう。ありがと』
振られることを覚悟していた私は、伏せていた顔をはっと上げた。
「え?」
『君も僕達のファンだったんだ・・・知らなかった』
・・・どうやら祝歌隊の彼は「好き」という言葉を勘違いしているらしい。ステージの上でするように、軽く手を振って私の前から去ろうとしていた。
「違うの・・・あの・・・その!」
行ってしまう・・・!慌てた私は咄嗟に彼のなびくスカーフの端を掴んだ。驚いた彼は立ち止まり振り返る。
『・・・僕、忙しいんだけど』
「私、あなたを一人の男性として好きなの・・・!」
『・・・・・・・・・え?』
「ずっと見てたの・・・あなたのこと・・・あなたがここに来た時からずっと・・・ずっと・・・」
『・・・・・・・・・それって』
『バイオレット、こんなところにいたのか!』
大きな声にびくりと肩が跳ねる。ふたりの空気を破るように、彼の友人のひとりが小走りで近付いてくる。
「あっ、えっ・・・と」
『・・・グリーンヒル』
『ブラバットさんがお前を呼んでいるぞ。早く行け』
『・・・・・・・・・・・・』
彼は何事もなかったかのように友人と言葉を交わし、この場を去ろうとしている。
このままでは彼からの返答はもらえないまま、有耶無耶になってしまう・・・
どうすることもできないまま震える脚で立ち去ろうとした、その時だった。
『・・・マリア、今夜僕の部屋に来て』
横をすり抜ける彼が、私の耳元で微かに囁いた。はっと顔を上げたけれど、その表情ははっきりとは伺えなかった。
彼に聞こえたのではないかと思うほど、鼓動がどくんと跳ね上がる。
「・・・うん」
すれ違いざまに密かに握られた手が熱い。
彼の友人がきょとんとした顔で私を一瞥したが、私たちを取り巻く空気に気付くことなく去っていく。彼もその後に続いた。
私はしばらくその場から動けなかった。
「もう・・・心臓がもたない──・・・」
壁にずるずるとへたばる私は膝を抱え腕の中に顔を伏せた。
私の顔を染めた犯人は、とっくに廊下からいなくなっていた─────
******
「あ、あっ・・・いや・・・!」
『・・・いやなの?』
わざと首をかしげてみせる彼。
その間にも彼は素知らぬふりで私の中を突き上げ続ける。
「・・・あっ、あ、私・・・っ」
『・・・っ』
鼻を抜けるような嬌声が漏れ始め、唇を噛み締めた。一度目を終えて余裕を取り戻した彼が、私の腰をぐっと掴む。
「・・・もう・・・やめてよ・・・っ」
『・・・・・・やだ』
私が抵抗できないことを知っていて、彼は得意げに微笑んでみせた。
一度達してしまった私の粘膜は彼の熱を敏感に感じ取る。欲情を隠さない彼は私の奥で再び質量を増していく。
「も、もう・・・やだぁ・・・!」
『・・・マリア』
腕を引かれて、身体に力が入らない私は彼の胸に倒れかかった。
彼から際限なく与えられる快感、返事がもらえないもどかしさ、そして好きな人に求められる悦び。たくさんの感情が入り混じって涙になって溢れた。
『・・・どうして泣くの』
「だって・・・っ」
涙を赤い舌でぺろりと舐められる。
いつもと纏う雰囲気が違う彼の仕草に背筋がぞわりと粟立つ。
「こんなことするために・・・来たんじゃない・・・」
彼が律動を止め、私を見つめる。
「・・・恋人同士でもないのにこんな・・・・・・」
『・・・・・・・・・』
「ひどい・・・!」
好きな人にこんなにも激しく求められることは嬉しかった。
でもこれ以上は惨めになるばかりだった。
*
彼が起き上がり、汗が滴る髪をかきあげた。
一度目は月光色、二度目は狼眼の色。前髪の隙間に垣間見える瞳は、時の移ろいのように薄闇の中で色を変化させる。
私の腰を片腕で抱き抱えると、剛直をくわえ込まされたまま彼に組み敷かれた。
「あっ・・・そんな・・・・」
『・・・まだ分からないの?』
彼が私の顔の横に手をつき、再び抽送を始める。溶けきった私の中は激しい律動にぐちゃぐちゃと音を立てた。
「あっ!やっ!」
『・・・僕は・・・言葉にするのが苦手だから』
脚の間を割って入った彼から口付けの続きを施される。彼の生々しい興奮が唇から伝わって、私の奥でまた何かが溢れ出す。
*
「あっ、あっ!」
『・・・嬉しいよ』
自分自身の言葉に興奮したかのように、私の腰をぐっとつかみ奥の窪みをじゅくじゅくと攻め立てる。
「あっ・・・バイオ、レット・・・!」
『・・・こんな僕だけど・・・・・・っ』
そこから先は、彼は深いキスで答えてくれた。
「・・・・・それ、って・・・」
『・・・察してくれたら・・・嬉しいんだけどね』
困ったように少し笑う彼。
もどかしさがこみ上げてくる喜びに変わり、あまりにも深い快感に意識が飛び飛びになる。
「あっ!あっ!やっ・・・」
『もっと・・・君のことが知りたい・・・』
軋むベッドと粘着音と私の嬌声、そして彼の息遣い。
きっと今彼の部屋の前を通れば、中で何が行われているか誰でも分かってしまうだろう。
「・・・・・・っ!」
自分の手の甲で声を噛み殺そうとしたが、彼が私の腕を引き剥がした。
「あっ!バイオレット・・・・!」
『もっと聞かせて・・・』
「好き、好き・・・・・・あぁ・・・っ!」
私は幸福に包まれながら二度目の絶頂を迎えた。
白い光の中で、彼が私に暖かなキスをした感覚をはっきりと感じた。
『・・・ふふ』
************
『・・・ごめんね』
事が終わって最初に彼が囁いたのはこの言葉だった。私はいまだに火照る顔を両手で隠しながら、彼の言葉を聞いていた。
『・・・嫌だった?』
「・・・ううん・・・でも驚いた・・・」
彼は少しだけ笑って、私を胸に抱き寄せた。
私は火照る顔を隠すように、彼の胸に顔をうずめた。
『・・・こういうの・・・慣れてなくて』
「・・・・・・・・・」
『つい・・・・・・』
彼の言葉はそこて途切れ、規則正しい寝息が聞こえ始めた。
───彼はただ優しいだけの男じゃなかった。今日一日で彼の意外な一面をどれだけ知ったことだろう。
私は眠りにつく彼に聞こえないように、幸せを噛み締めながらそっと微笑んだ。
「・・・・・・よろしくね、バイオレット」
end