いつかその瞳が私をうつすとき

!!バイオレット教団編がっつり裏です!!













内腿を彼の薄手の衣が擦れる。それだけで彼の身体を感じ、マリアのオンナの身体は花開く。



『・・・声、出さないでね』


「・・・んっ・・・」



彼の低い体温が唇に触れて、普段の言動に反して慣れた舌遣いに翻弄される。きっとたくさんのオンナを魅了してきたであろうその唇。マリアは高ぶる身体を捩らせながら目を閉じ思いを巡らす。・・・自分もその中のひとりに過ぎないのだと、些か悲しみすら感じて。



「・・・っ、ひどい人・・・」


『・・・君こそ』



私をこんなに夢中にさせて、そんな気持ちも知らないで弄ぶだけ弄んで。
初めての恋がこんなに辛いものになるなんて。貴方の瞳に写るのは黄色い歓声をあげる女の子たちでも、ましてや目の前で痴態を晒す私でもない。








「私だけを見て」
・・・この一言をいう資格は私にはない。
エリート街道を外れた暗い過去を持つ彼には、それまでの彼を支え続けたひとりの女がいる。彼は今でもその子だけを想って、その子の代わりに他のオンナを抱いて。そんな彼につけ込んでこの関係を持ち出したのは、他でもなく私の方。



『・・・何考えてるの』


「あっ、ああっ!」


『集中してよね』



マリアの身体がびくんと跳ねる。いまだに慣れない切々とした痛みが下半身を突き刺す。随分と慣れてきたと思ったのに、充分すぎるほど濡れているのに、それでも彼を咀嚼するのに苦労する。



『・・・痛い?』


「・・・そんなわけ・・・っ」



彼は嘘を見抜くのが上手い人。私のナカが彼の形に馴染むまで何も言わず待ってくれる。少しだけ余裕がなくなる彼の汗が顔に落ちる。・・・その優しさが、貴方をそこまで追い込んだんじゃないの・・・?好きでもないオンナに情けをかけて、こんなに甘いキスを施して。でも、そんな貴方だからこんなに好きになってどうしようもなくて。

ヒリヒリとした熱感がじわじわと快感に変わって、マリアは情愛の皮切りに潤む瞳で彼を見つめた。


「あっ、あぁ・・・ん!あっ・・・」



ゆっくりと動き始める彼の真剣な表情にまた奥で何かが溢れ出す。濃厚な蜜が彼の情欲に絡み、ぐちゅぐちゅと粘膜を解きほぐす。必死に声を抑えるマリアの切羽詰まった表情がまた彼を煽って。

律動を繰り返しながら、彼がマリアの口を手で覆う。抑えきれない声が吐息になり彼の手のひらに消えた。



『静かに・・・あの人にみつかる・・・』


「ふ・・・ぅっ」





聞こえるのは互いの息遣いと粘着質な音だけ。忍ぶ恋はそれだけで情事を群青に彩る。・・・最も、この恋は私の片思いだけれど。こうでもしないと、きっと私は貴方に近づくことさえも出来なかった。真心も未来も初めても全て捧げて、数日前、やっと貴方は私を抱いてくれた。








マリアは膨れ上がる一方通行の想いに一粒だけ涙を流す。胸まで隙間なく密着し、私の首筋に顔を埋める彼はその涙には気付かない。


触覚以外の五感が鈍くなっていく。感じるのは、ただただ強い快感だけ。
的確にイイ場所を擦る彼自身を中ではっきりと感じて、襞に引っ掛かるたび甲高い嬌声が抑えきれなくて。口を覆う彼の手にぐっと力が籠る。夢中になって感傷をかき消せば、高みはすぐそこ。次第に彼の動きが速まる。



『・・・ぁ、出すよ・・・!』


「あっ・・・!私も・・・っ!」



全身にぐっと力が入り、マリアは押し寄せる白い波に全てを預けた。それを見届けるようにズルリと彼自身が引き抜かれ、目を瞑るマリアの腹に熱い白濁を吐き出した。



「あ・・・バイオレット・・・!」


『・・・・・・っ!』








・・・貴方が教団に入ってきた時、まさかこんな関係になるなんて思ってもみなかった。惚れたが負けとはよく言ったものだと、マリアは余韻に任せて悔しさを彼の背中に食い込ませた。すこし顔を歪ませてマリアの頬を微かに笑いながらつねる彼。しばしの恋人ごっこは互いの熱が冷めるまでの戯れ。



もう浅い仲ではないのに、彼の心の中は今でもよく分からない。私のことを愛していないはずで、貴方が密かに疑念を持っている教団の構成員である私は、恨みの対象であってもおかしくないはずなのに。この優しさに私は一人溺れていく。

ただ分かったことはいくつかある・・・



『今日はこれで終わり・・・疲れたよ』


「どうして最後・・・外に出したの・・・?」


『・・・・・・相手が君だから』



そう言って私にキスを施す彼の中には私と歩む未来はないということ。私たちの関係には終わりがないこと・・・ましてや始まってすらないことも。
いつか貴方の永遠の恋が終わるのが先か
・・・既成事実が出来上がるのが、先か。


こんな関係で終わらせられるほど、私は出来た人間ではない。望むものが手に入るまで、私は彼にすべてを捧げ続ける。





end


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bkm





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テーマ「人外ファンタジー」
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