こんな結末は望んではいない

バイオレットちょい裏














めぐりめぐって、月日が流れても
また君に会える日が必ず来ると
ボクはずっと信じて疑わない

・・・はずだったんだけど




「ね、バイオレット」




いつも色目を使って
語尾にピンクのハートマークを付けて
ボクに擦り寄るオンナ

ボクがどこにいても仲間といるときも
時にはあの人の前でも
同じように至近距離に寄ってくる
・・・皆が眉をひそめてること、気付かない?




『・・・ちょっと、鬱陶しいんだけど』



「だってバイオレットが相手してくれないから」




そう言って拗ねる君
何なんだろう。

ボクの自惚れでなければ・・・





『そんなに構ってほしいの?』



「・・・・・・・・・・・・」



『ボクのこと、好きなの?』



「・・・・・・・・・」





無言でボクの目を見つめる君の
視線がやたら鋭くて少し怯む。

なんだ、やっぱり自惚れだったかな。
とにかく鬱陶しい。からかうのも大概にして欲しい。
進まない話に痺れを切らして
ボクは部屋を出ていこうと扉に振り向いた。





『・・・構ってほしいのはそっちじゃないの?』





・・・今、なんて言った?


扉に向いた足を止め振り返ると
真剣な眼差しの君と目が合った。
・・・なんの冗談だよ。




『・・・・・・・・・は?』



「ねえ、バイオレット・・・」




これは怒りなのか、呆れなのか。
近寄る彼女の頬を打ってしまいたくなるのは
ボクはそんなに穏やかな性ではない証拠。

ここでことを荒立てることは避けたい。
拳をぐっと握りしめ
ボクの胸に当てられる君の手を
払い除けたくなる衝動を抑える。



『・・・意味わかんないんだけど』



「・・・私を抱いて」



ちょっと、抜かったなと思う。
ここは劇場裏の控え室で、
今はボク達の他に誰もいない。

言いたい放題言わせておけば
挙句の果てに「抱け」だって?
・・・何なのこのオンナ、軽すぎるでしょ・・・



「なァに、好きな女しか抱けないの?ウェストンのお坊ちゃんは」



『・・・・・・何言ってるの?』



「知ってるのよ・・・前の恋人が、忘れられないんでしょう?」



『・・・えっ?』




固まるボクの唇に
柔らかな感触が押し付けられる
反射的に唇を噛みちぎってやろうとした時
ボクは嫌なことに気が付いてしまった


態度とは裏腹の優しいキスは
とても慣れているとは思えない程稚拙で
低い体温のまますこし震えていた



『・・・っん!ちょっと・・・な、何・・・』



肩を押し返せば案の定
静かに涙を流す君の姿が
ボクの目に飛び込んできた




「・・・その子の代わりでいいの」




『・・・・・・・・・・・・』




「目を閉じて・・・私をみないで、私を抱いて」




もう一度キスをしようと顔を近づける
君を振り払い、今度こそボクは部屋を出た。
追いかけてくる気配は無いけれど
無意識に早足になる





ボクは君みたいな人間は大キライだよ。
ボクに好きな女がいるって分かっておいて
・・・それでも抱け、なんて正気の沙汰じゃない。


ボクの好きな女はずっと変わらない。
今も、昔も、・・・そして、きっとこれからも・・・・・・





『っ、何なんだよ・・・!』






目に焼き付いた彼女の悲しい残像が
劇場裏で唇を噛むボクの中に
はっきりと影を残した






end


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