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リリアの斡旋
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「…どこの世界も変わらない、一種族の歴史なぞ言わば戦争の歴史も同然だろう。今更この僕が人間のことを学習することに何の意義がある」



ディアソムニア寮の奥に通され、私の身長の倍もあろうかという扉を開く。重厚な建築に圧倒される私をよそに、私室の主は私に真っ向、ぶっきらぼうに言い放った。


彼は腕を組み、眉をひそめ私を直線的に見つめている。人間の世界ではそう見ることのない燐光の瞳に射抜かれ怯みそうになるが、私だって教師のひとりだ。

一生徒を相手に、後退りをするわけにはいかない。



「…学ぶものがあるのかないのか、そんなこと教師が決めることじゃない。何を学びとするかは学習する貴方が決めることよ」



マレウスは何も言わない。頑として動かないその表情からは、感情の機微すら読み取れなかった。


しかし、慣れとは怖いもので、生徒に反抗的に接せられることは教師にとって日常茶飯事である。むしろ、反抗されれはされるほどに燃えてくるというもの


…たとえ相手があのマレウスであっても。



「人間のことを妖精族よりも弱者であると決めつけて、初めから突っぱねてしまうなんてなんともったいないこと…仮にも王になる者なら、何を大切にし何を学び、何を尊ぶべきか言わなくても分かっているでしょう。多角的に物事を捉えなさい」



言い終わったあとではっと我に返り、勢いに任せて言いすぎたと頭の中で逡巡した。マレウスはただ静かにこっちを見ているだけだった。


しまった、と思うと同時に頭の中では彼に取り込まれて、私という一生が幕を下ろす映像が駆け巡る。

派手に震え出す手を背後に隠した隙に、マレウスは私の方にぐっと近づいた。


「いやっ!や、やめてっ……!」








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