壊れかけた白い世界で
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────行く道は曇り、ロンドンの閑静な郊外。
学園を追われた日、僕はその足で彼女の住む町へ向かった。三日三晩降り続いた雨でできた水たまりが雫を撥ねる。通いなれたはずの道がいつもと違って感じた。
早朝だが彼女は起きているだろうか。
手紙は届いただろうか。
『マリア・・・僕だよ』
「グレゴリー!」
家に着くなり、血相を変えた彼女が飛び出てきた。
最後に会った夏よりも少し痩せたようにみえる。手には薄い便箋が握りしめられていた。
あまりに悲愴な表情に、僕は自分が何をしてしまったのか、改めて事実を突きつけられたような気がした。
「本当なの!?本当に・・・人を・・・」
『手紙の通りだよ』
「そんな・・・!」
「おかえりなさい」も「久しぶり」もなかった。
僕の口から真実を確認すると、彼女は堰を切ったように涙を流しはじめた。
手紙に認めた事実に嘘偽りはない。
僕はどこか冷めていた。人殺しである僕を怖がるなら怖がればいい。それが、罪人である僕に対する世の中の総意だろう。彼女だけは・・・なんて女々しいことも言うつもりもない。
未来の全てを失った今、僕に残ったのは恋人のマリアだけだ。そして今日ボクはここへ来た理由は他でもない。
既に覚悟はできていた。
最後に、マリアを失うことは───
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