短編小説A | ナノ



紫黒の遊撃手
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3球目、4球目、5球目・・・
投げ込まれる球は多彩で
緩急に目が慣れず一向に球が前へと飛ばない


紫寮は投手戦を好みピッチングで勝負する
そう聞いていたがここまで層が厚いとは・・・
レドモンドは唇を噛み締めた

・・・俺が打てないせいで負けるかもしれない
俺を信じて全てを託し、見送ってくれた
先輩に黒星を背負わせてしまう・・・!

手が震え額に冷や汗が伝った、その時





『レドモンドー!頑張れー!!』

『頑張ってー!レドモンド様ーっ!!』




方々から自分の名前を呼ぶ声が
紫寮の歓声の間を縫い耳に届き
・・・はっ、と前を向いた


そうだ、俺はここで負けるわけにはいかない
ここで勝って決勝戦に進んで
先輩達に優勝旗を贈るんだ・・・!


それが、俺達寮弟の役目じゃないのか・・・!!




『くっ、俺としたことが・・・こんなことで弱気になるとは』


ふ、と足元のラインを見つめ笑う
応援は何よりも強い力となり彼の背中を支えた
もう何も怖いものはない
ただ、俺は前を見て振るだけだ!!



『さぁ、次で決めてやる!!』



投手が構える
レドモンドはぐっ、と力強くバットを握った
その瞳は確実に球を捉えていた



『・・・お前の球は・・・』


低い低いアンダースローで投げ込まれた
それは・・・・・・速球ストレート!!


『・・・・見切ったァ!!!』


完全にバットの芯を捉えた打球が豪速で
左前の空を裂いていく



わぁぁぁ!!!と歓声が上がる赤寮
観客席もベンチも皆立ち上がり拳を突き上げ、
誰もが赤寮の逆転サヨナラ勝利を確信し
11人が芝生に駆け込もうとした






・・・・・・・・・その時だった・・・・・・・・・・・・












『バイオレットォォォォオ───!!』





紫寮のベンチから監督生の
全てをかき消す大きな怒号が響き渡った










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