短編小説A | ナノ



ビラヴド
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ずっと好きだったのに届かなかった相手だった。


「私貴方が好きなの」

『・・・ごめんね、ボクそういうの苦手だから・・・』


───それでも強欲な私はどうしても彼が欲しかった。


「じゃあ・・・お願い、私を抱いて・・・?」


『何言ってるの・・・?』


「ほら、ここにいたって娯楽なんて何もないじゃない。退屈しのぎに・・・ね?」


気持ちが手に入らないなら身体だけでも・・・。その一心で『都合の良い相手』を演じきったあの夜。


『・・・そんなの必要ないよ』


「・・・貴方の好きな人の代わりになってあげる・・・って言っても?」


『・・・!?』


無理やり奪った唇。彼は私を押し返したけれど、私は何度も彼に甘い話を持ちかけ続けた。


「どんな酷いことをしてもいいのよ?好きなようにしてくれていいのよ・・・?」


『な、何言って・・・・・・』



ついに彼が根負けしたあの日の夜。



「・・・私を見なくていい。好きな子にしたかった事を、私にして・・・?」


『・・・意味がわからない』




前戯もなしに捩じ込まれる欲望。
まるで何かをぶちまけるかのような激しい行為。実際に抱かれてみれば愛のない情事なんてただの自傷行為に過ぎなかった。


それでも私が決定的に壊れるような抱き方をしなかったのは、彼が優しい性格の持ち主だったから。


いつか彼が振り向いてくれる・・・本当の愛に気付いてくれる・・・
ありもしない望みにもがきながら、優しい彼の冷たい背中を何度見送ったことか・・・・・・・・・



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