短編小説A | ナノ



紫黒の遊撃手
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遊撃手・・・それは
俊足を持ち、直感力のある選手でなければ
務まらない、いわば守備の要である

無気力試合を行うような奴を紫寮は
果たして遊撃手に置くだろうか・・・
レドモンドは首をひねる




『要注意かもしれん・・・しかし、もはやそこにしか突破口はない』




紫寮の応援席から歓声があがる
見れば投手が6打席を投げきり
マウンドを降りるところだった




『・・・よし、行ってこい』


『・・・はい』



赤寮の打者は残すところレドモンドのみ
この登板を1失点に抑え
マウンドを降りた投手と目が合う

静かにベンチから立ち上がるレドモンド
勝利を確信した紫寮の歓声と
投手の笑い声が高らかに響く



『あと1人!あと1人!』

『ヒャッハァー!レドモンド先輩、ドンマイっス!この試合の白星、オレ達紫寮がもらいますよ!』


『・・・ふん、見ていろ』



打席に立ち、長い髪を高い位置に結び直す
女性達の悲鳴のような黄色い歓声も
今日は聞こえないほど意識はボールに向かう

二度三度素振りをし
バットを高々と構え
レドモンドは投手に向き合った



『・・・こい!!』




一球目。
紫寮の次の投手から放たれた球は
ど真ん中のストレート。


『くっ・・・!』


バコ、という音ともに
芯で捉えきれなかった打球が
地面をバウンドし傍らの守備の手に吸い込まれる。


『なめた真似してくれる・・・!』


初球から速球を投げ込まれ
悔しさに思わずバッドで地面を叩く。
投手は気にせず次のボールを構えた。



二球目。

初球でストレートを見切ったレドモンドは
次もストレートを待った。

彼の高身長への対策か
内角一杯に構える捕手に気付き
レドモンドはやや後ろに脚を構え直す。


球は再びストレート
・・・と思われたが、ミートポイントの
少し手前で球が加速しながらがくんと落ちた。


『なっ・・・・・・!?』


またも防戦を強いられ
球はバットに当たり地面を転がる


『カーブ・・・だと・・・?!』










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テーマ「人外ファンタジー」
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