短編小説A | ナノ



絶望してみせてよ
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こっちにおいで・・・



ゆらりと紫黒の影が揺れる
手招きする白い指と艷めく爪先
目深に被るフードの奥は深淵


「せん・・・ぱい・・・?」


脚がすくみ動かない
本能が接近を拒む
いつもの先輩と何かが違う

・・・きっとそれは
唯一見える口元が釣り上がっているせい



『ほら・・・』



差し出された血艶の林檎
それが目に入った途端・・・私は
意に反し前に歩き出した

だめ・・・いけない・・・引き返して・・・
心の中で自分の脚に懇願しても
身体は言うことを聞かず前へ前へ進んで
心臓の鼓動がバクバク響いて痛い


「・・・・・・っ」


やがて差し出されるまま
じっとりと湿る手で林檎を手に取った私は
黒く歪曲する意識に飲み込まれた・・・・・・



『・・・・・・ふふ』








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テーマ「人外ファンタジー」
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