絶望してみせてよ2/11
こっちにおいで・・・
ゆらりと紫黒の影が揺れる
手招きする白い指と艷めく爪先
目深に被るフードの奥は深淵
「せん・・・ぱい・・・?」
脚がすくみ動かない
本能が接近を拒む
いつもの先輩と何かが違う
・・・きっとそれは
唯一見える口元が釣り上がっているせい
『ほら・・・』
差し出された血艶の林檎
それが目に入った途端・・・私は
意に反し前に歩き出した
だめ・・・いけない・・・引き返して・・・
心の中で自分の脚に懇願しても
身体は言うことを聞かず前へ前へ進んで
心臓の鼓動がバクバク響いて痛い
「・・・・・・っ」
やがて差し出されるまま
じっとりと湿る手で林檎を手に取った私は
黒く歪曲する意識に飲み込まれた・・・・・・
『・・・・・・ふふ』
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