短編小説A | ナノ



紫黒の遊撃手
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『あの投手から1点取れただけでもよしとしましょう。・・・それより、先輩』


『どうした』


『紫寮の守備には穴がありますね』


『・・・お前もそう思うか』


『はい』



興奮に沸き立つ赤寮の観戦をよそに
ふたりは静かに相手を観察する

打席の左前方、やや広範囲にたたずむ遊撃手
彼はどうやら参加する様子もなく
ずっと地面を足で叩いている



『あいつはたしか寮弟の・・・バイオレットか』


『あいつは試合に興味がないようで・・・完全に無気力ですね』


『なんという奴だ!守備に穴を開けるとは、紳士じゃないぞ!』


『だがこちらとしては好都合です。奴の守備範囲を抜ければ・・・』


『・・・バウンダリーだな。一気に逆転だ』


『そうなります。ただひとつ気になるのが・・・』


『なんだ』


『・・・奴が遊撃手である、ということです』









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