紫黒の遊撃手4/9
『あの投手から1点取れただけでもよしとしましょう。・・・それより、先輩』
『どうした』
『紫寮の守備には穴がありますね』
『・・・お前もそう思うか』
『はい』
興奮に沸き立つ赤寮の観戦をよそに
ふたりは静かに相手を観察する
打席の左前方、やや広範囲にたたずむ遊撃手
彼はどうやら参加する様子もなく
ずっと地面を足で叩いている
『あいつはたしか寮弟の・・・バイオレットか』
『あいつは試合に興味がないようで・・・完全に無気力ですね』
『なんという奴だ!守備に穴を開けるとは、紳士じゃないぞ!』
『だがこちらとしては好都合です。奴の守備範囲を抜ければ・・・』
『・・・バウンダリーだな。一気に逆転だ』
『そうなります。ただひとつ気になるのが・・・』
『なんだ』
『・・・奴が遊撃手である、ということです』
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