Is this your scenario?
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そんな彼に絵のモデルになって欲しいと頼まれ、晩餐会に戻りたくない私は二つ返事で了承したわけだ。
『............』
「......もう少し......?」
『こう...なんて言うのかな...』
彼は表現に迷っているらしい。手を止め目線を左下にそらせば、目元により濃く影が落ちる。私は身じろぎもせず彼の言葉を待った。
「.........」
『......甘い顔...って言うのかな...』
「えっ?」
思わぬ言葉に顔を上げる。
ただでさえ慣れない雰囲気に緊張している私に追い討ちをかける言葉。誤魔化すように苦笑したけれど、彼はいたって真剣な眼差しで私を凝視していて、私はあがった口角を再び強ばらせた。
「......甘い...?」
『...そう、恋人に向けるような感じの...なんて言うんだろう...』
恋人という言葉に、心臓がどくんと跳ねる。取り繕うように、私は意地悪に笑って彼に言った。
「分かんない...お手本見せてよ」
ややあって、僕ができるわけないでしょ、と苦笑を浮かべる彼。彼の表情の変化に呼応するように、彼の傍らに置かれた時計が静かに音を立て始める。
『...とにかく甘ったるい顔、してみて』
「.........」
『......僕を恋人だと思ってさ』
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