短編小説A | ナノ



Is this your scenario?
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──言葉遣いのせいか、顔立ちのせいか、幼馴染みである彼は今でもどこか幼い印象を残す。
名門寄宿学校の監督生になったと手紙で知ったときは驚いたけれど、休暇で帰ってきた彼は相変わらず重苦しい外套を羽織っていて、変わらない姿に私はすぐに安堵した。


「少し背が伸びた...?」

『...たぶん』


親同士も仲が良い私たちは、休暇になると彼の邸に呼ばれるのが恒例だ。彼の寄宿学校の話が聞けると、私は胸を踊らせて彼の住む邸に向かったというのに、彼が晩餐会の場にいたのはわずか数分。スープが運ばれてくる頃には彼は消えるようにいなくなり、私は密かに嘆息をもらした。大人達に聞いてもああ、あいつの事だから、と気にも止めていないようだ。



──久しぶりに会えたのに。
大人達に囲まれひとり顔を引きつらせる私も、頃合を見てこっそりと廊下に出る。


「...ひとりにしないでよ...っ!」



姿を消した幼馴染みにひと通り悪態をつく。勝手知ったる彼の実家、私は迷うことなく休憩室を目指し歩き出す。蝋燭の心許ない灯りしかない廊下は薄暗く、先は朧気にしか見えない。絨毯が足音を吸収して、辺りは不気味なほどの静けさだ。


ふと、向かいから歩いてくる人影が目に入る。片手には大きなパンを持っていて、シルエットからすぐに誰だか分かってしまう。



『グレッグ!』

「......あっ」


私は影の正体に気付くとすぐに駆け寄った。立ち止まった彼は悪びれる様子も見せない。唇を尖らせる私からふと目線をそらし、何か考えている様子だった。幼い頃からするように彼に飛びつけば、至近距離で彼と目が合う。


『もう...ひとりにしないでよ、話し相手がいなくて寂しいじゃない!』


怒ったフリをして言えば、彼はふふ、と苦笑してフードを取る。


『...どうにも、あの場は苦手でさ』



...やっぱり、以前と纏う雰囲気が違う。元々整った顔立ちはしていたけれど、今はどこか大人びた顔つきになっている。思わず言葉を詰まらせる私の目を見つめて、彼は言った。


『...マリア、ちょうどよかった』


「っ、何よ...」





『今からちょっと僕のアトリエに来てくれる?』



それだけ言うと彼は私を引き剥がし、アトリエへと帰っていく。私は一瞬の後、彼の姿が闇に消える前に後ろ姿を追いかけた。



「待ってよ、グレッグ!」



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