短編小説A | ナノ



今、君に
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『あれから連絡が取れなくなってずっと気になってたんだ』


「・・・・・・・・・」


『君も・・・あいつも』


「あいつ」という男の言葉に私は「彼」の顔を思い浮かべた。
手元のグラスを見つめる。氷が溶けて音を立てた。


『・・・今までどうしてた』


「・・・・・・・・・」


『今も奴と一緒にいるのか』


私は沈黙をもって返答した。

思い出すだけで胸が詰まりそうになるけれど、私は今までの数年間を少しずつ言葉にした。


「・・・彼が今どこで何をしているか・・・私も知らないわ。生きているかどうかも・・・」


『・・・・・・そうか』


「・・・罪を償いたいって言って、どこかに行ってしまったの・・・」


『・・・・・・』


「・・・私はついて行かなかったから」



とっくに枯れたと思っていた涙が一筋だけ溢れた。隣の男に悟られないように、震える声を隠し涙は拭わなかった。


「・・・きっと何処かで生きてると思うわ」



『・・・あいつらしいな。最後まで君を心配させるなんて・・・紳士の風上にも置けん奴だ』



俯く私を見て、男は雰囲気を払拭するように少し笑う。




『・・・あいつのことだ。どこかで一人で鬱々と元気にやってるだろう』



「なにそれ・・・」



つられてくすりと笑ってしまう。
私の様子を見て男もほっとしたように、でもどこか真摯な眼差しで眼下を眺めている。



『・・・あれでも一途で強いやつだ』


「・・・うん」


『気が済んだ頃にひょっこり戻ってくるさ』



確かめるように、懐かしむように言う男。
彼の長年の友人の言葉は私の胸にまっすぐに落ちる。







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