今、君に
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振り返った先には、背の高い男が立っていた。
榛色の長髪に凛と整った顔立ちの男は、媚びない笑顔で私に会釈をした。
「・・・あなたは」
『久しぶり、お嬢さん』
見知った顔に私は驚く。
男は私を見てにっこりと微笑んだ。
「・・・レドモンド」
『変わってないな』
もう何年前のことだろうか。
「彼」から友人だと紹介されて知り合った男。彼の親友だった男とは、以降も親交があった。
その頃から、彼は知性を感じさせる風貌で、明るく私に話しかけてきてくれた。
「・・・あなたも」
どこか憂いを帯びた瞳は私の様子を見て、言葉を選ぶように先を続けた。
『・・・元気にしていたか』
「ええ。あなたは?」
きっとお互い聞きたいことは山ほどあるはずだ。けれど事情を知っているからこそ、聞けないこともある。
『・・・相変わらずだよ』
少しの沈黙があったのは、きっと私が人付き合いが苦手なせいだけではなかったと思う。
このまま別れてしまうのも気が引ける・・・
戸惑う私に、彼はかすかに笑った。
『・・・いや、気まずいのも仕方がないかもしれないな』
「・・・・・・」
『少し話をしないか。積もる話もあるだろう』
男が静かに歩み寄り、私の隣に並んだ。手すりに寄りかかり、星が綺麗だと感嘆する。男の気さくな様子に私の気持ちも和らいだ。
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