I can't live without you

え、なにこれ。なにこれ。
私はしばらく実家に帰るから、と言って同居していた万屋の主である銀時に家事を任せたのだが、見てみると腐海の森。
あの眼鏡の新八クンもどうやら実家へ、元気ガールの神楽チャンも実家の星へ。
そうすると必然的に銀時が家事やら何やらすることになるのだが、1週間程度でどうやったらここまで汚せるのか。どうやってここまで荒らせるのか。空き巣でも入った気分だった。
肝心な銀時は今いない。大方パチンコにでも行っているのだろう。本当に腐ってる奴だ。
どうしてこんなやつを好きになってしまったのだろうか。
最近、時々思ってしまうのである。

仕方なく荒れた部屋を片付け始めた。机の上に散らかっているコンビニ弁当を見ると、ちゃんとした食事を取っていないことが分かった。
空のパフェのプラスチックのゴミ、空の弁当のゴミ、ペットボトル、缶ビール、スナック菓子、つまり散らかし放題。
はあ、と大きくため息をつき、ゴミ袋を出してゴミを詰めていった。
台所のシンクを見れば、洗っていない皿に汚れがしっかりこびりついている。せめて水に浸けていてくればまだ洗うのも楽なのに。
冷蔵庫の中身はすっからかん。これは買い物にも行かなくてはならない。

台所を離れ、洗面所へ向かえば、カゴからはみ出た衣類。
洗濯もできないのかあのバカは。また大きなため息を吐き、洗濯機に衣類を詰めていった。
ゴウンゴウンと洗濯機が回り始めたのがわかると、今度は風呂場を綺麗に掃除した。
掃除と言えば、掃除機も銀時の事だから一度もかけていないだろう。


こうして昼過ぎに帰ってきたのに、掃除掃除掃除とひたすら掃除に追い込まれて気が付けば日が暮れていた。
すっかり綺麗になった部屋に満足しながら、今度は米をとぎ、炊飯器のスイッチを入れ、買い物に出かけた。

冷蔵庫の中はすっからかんだったため、多めの買い物をしてしまったようだ。
なかなか荷物は重かった。銀時がいれば手伝ってくれるだろうに。
嗚呼、やっぱり銀時は必要なのだなあ、と思う。

すると、後ろから聞き慣れた声がした。

「おい、ジャイ子。帰ってきたのか?」

ふ、と後ろを振り向けば、必要としていた銀髪のバカヤロー。
生活力もろくにない、金もろくにない、だけど信頼が厚くて、人望がある不思議なバカヤロー。プー太郎。天パ野郎。

「え、なにジャイ子ちゃん、すごい銀さんのことけなしてない?え、なんなの?銀さん傷ついちゃうんだけど」

「…銀ちゃん、早く荷物持ってよ。重い。」

「あ、スルーですかそーですか」

そう文句をぶつぶつ言いながらもちゃーんとしっかり荷物を持ってくれる優しい銀ちゃんプー太郎。
だからプー太郎は余計だろバカヤローと怒られたが、プー太郎は事実だから仕方がないじゃん。


「銀ちゃん、私なしだと本当に生きていけないんだね。なにあの部屋。なにあの食生活。ひどすぎるよ。」

「説教ですかジャイ子ちゃんよォ」

「事実でしょ、全く。」

「…まあ、そうだな。お前なしだと俺生きていけねーわ。ジャイ子がいなかったから夜も寂しくってな〜」

「ばか」

「だから今日は覚悟しとけよ?」

にやりと意地悪く笑った彼は、早く帰ろうぜ、と言って私の手を引っ張った。


違うの、私が銀時なしでは生きていけないの。



「銀ちゃん、大好き」

「…不意打ちはマジでダメだからな…」


顔を真っ赤にする銀ちゃんが愛しくてこれからもずっとそばにいようと決めた。



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