3 「ゆうたーー」 「ゆうたーーん」 ぐでんとした二人がオレのところにやってきた。 アイス食べたいだのジュースが飲みたいだのわがままな子になっちゃいました。 別に保護者的な立場になりたいわけじゃないけど、いつの間にか保護者というか、なんというか… でも、それにしても今日は暑い。八月に入ってから一気に暑くなった気がする。 オレだって暑いんだから。奢ることはしないけど、アイス、食べに行きますか。 「えっ!?ゆうたんの奢り!?さっすが〜!」 「ゆーたお金持ち〜ひゅ〜」 「……」 ため息が出るのは仕方がない。 3.side:悠太 もちろん奢る気なんかさらさらなかったから二人は自腹だった。 たかがアイスごとき、されどこの暑い中。 みんなで仲良くガリガリ君をいただきました。(学生はお金がないのです) 「じゃーなゆっきーゆーたん!」 「千鶴はもう来なくていいよ」 「あんだとゆっきー!もう漫画かさねえからな!」 「はいはい千鶴の漫画面白くないからねー」 「くっそおお覚えとけよおおおおおおお!!!!!!」 なんて幼稚なんだろう。でも少しだけ微笑ましい。 ようやく弟にいい友達ができたんだ。なんていうか、嬉しいよお兄ちゃんは。 「はーあ、ゆうた帰ろー」 ケータイをぱかり、と開けて時間を見ればもう夕方の6時だった。 最近は受験生というのもあって、必然的に勉強せざるを得ないので、涼しい学校で勉強をしているのだ。 最初はオレ一人だけだったのに、祐希が来て、次に千鶴が来て、と言ってうるさくなっていった。 要は塾。春は家で頑張るらしい。とまあ、そういうわけなのです。 「ねえゆうた、塾、行くの?」 「いや、夏期講習だけ。」 「ほおー。お兄ちゃんは大変ですな」 学校の周りは割と受験モードに入っていない。そもそもそこまで進学校ではないから、あんまり受験に熱が入っていないのだ。 まあ要を見ていたら色々興味がわいてきたんだけど。 そこで要が行ってる塾の夏期講習だけ行くことにした。 「…そうだよお兄ちゃんは大変ですよ」 「…負担になってる?」 「んー、そんなに。嫌々じゃなくて、いつの間にかそうなってますから」 「負担かけるの誰だろうね、オレ許せない」 「…一番近くにいるんだけどね」 この時間帯は、無茶苦茶暑かった昼時とは打って変わって風が気持ちいい。 虫の大合唱も夏のよきBGMでオレは嫌いじゃない。 ああ、こうやって夏が過ぎて、秋が来て。そして冬か来て。 春が来て、オレたちは穂稀高校を卒業する。 「祐希、お兄ちゃんも頑張るけど、祐希も頑張ってね」 「んー」 無愛想な返事だけど、照れくさそうに向こうを見る祐希がいた。 さて、明日も頑張りますか。 |