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「あっちーな、今日も」

はあ、とまた大きなため息をひとつ。


「なに言ってるんですか要さん、夏はこれからじゃないですか」

「なにっ、要っちもう夏バテか?!」

「えっ、夏バテ?要くん、体調大丈夫ですか…?」

「あー春、要は常に燃えて尽きてるから」


「………おいてめぇら…っ」





高校最後の、夏。
(side:要)


「…大体なあ、もう受験生だぞ?そんな遊んでる暇なんてあるかよ」


「なーに言っちゃってんの!高校生最後の夏を楽しまずに何をするのさー!」


このバカザルは今日もうるさい。毎日よくこんなに騒げると思う。
この蒸し暑い中、ぎゃあぎゃあ騒いで、遊んで、怒られて、これが当たり前になってて。
全く、今日の小テストの単語見てたのにこいつらのせいで見れやしねえ。


「てかさあ要。最近学校行くの早いよね」

「…あー、勉強したいからな」

「ふーん」


悠太の言う通りだ。最近早めに学校行って勉強している。じゃないと、行きの道からこいつらといるとうるさくて勉強できないから…ってあれ?
じゃあ、なんでここにこいつらがいるんだ?


「まっ、今日から俺様もいっちょガリ勉になりますかー!」

「ちょっと千鶴、早弁の間違いでしょ、ちゃんとお弁当持ってきてる?」

「はいなはいな!ちゃーんとお弁当…ってゴラァアァアアア!!!」

「ち、千鶴くん落ち着いてください…!」

「あーもう無駄だよあの二人は」

「えぇでも悠太くん…」



ああホラ、うるさい。


「…ったく、うるせぇなぁ」

「まあまあ要、心配したんだから」

「はあー?心配ー?」

「もしかしてオレたちと離れたい、だとか」

「………」

「ま、そゆこと」


そう言って4人のもとに入っていった悠太を見て、ふと思った。

何を言ってるんだろう、悠太は。
離れたいとか、離れたくないとか考えたことなかった。
だって、幼なじみだから。幼稚園からずっと一緒で、ずっと同じで。
ぶっちゃけこいつら以外とここまで仲良いやつはいない。多分みんなそうだろうけど。


「要くーん!置いてっちゃいますよー!」


春の声が、聞こえた。
一人で行く予定だったのにいつの間にか増えていて、その中に自分がいる。
ああ。こいつら、オレにとって幼なじみだけじゃなくて、大事な奴らなんだ。
けなしてるけど、笑いあえる唯一の存在か。オレを許してくれる、大袈裟だけどそんな感じ。



「ったく、しょうがねぇな」




本格的に夏が、始まる。高校生最後の、夏が。






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