1 「あっちーな、今日も」 はあ、とまた大きなため息をひとつ。 「なに言ってるんですか要さん、夏はこれからじゃないですか」 「なにっ、要っちもう夏バテか?!」 「えっ、夏バテ?要くん、体調大丈夫ですか…?」 「あー春、要は常に燃えて尽きてるから」 「………おいてめぇら…っ」 高校最後の、夏。 (side:要) 「…大体なあ、もう受験生だぞ?そんな遊んでる暇なんてあるかよ」 「なーに言っちゃってんの!高校生最後の夏を楽しまずに何をするのさー!」 このバカザルは今日もうるさい。毎日よくこんなに騒げると思う。 この蒸し暑い中、ぎゃあぎゃあ騒いで、遊んで、怒られて、これが当たり前になってて。 全く、今日の小テストの単語見てたのにこいつらのせいで見れやしねえ。 「てかさあ要。最近学校行くの早いよね」 「…あー、勉強したいからな」 「ふーん」 悠太の言う通りだ。最近早めに学校行って勉強している。じゃないと、行きの道からこいつらといるとうるさくて勉強できないから…ってあれ? じゃあ、なんでここにこいつらがいるんだ? 「まっ、今日から俺様もいっちょガリ勉になりますかー!」 「ちょっと千鶴、早弁の間違いでしょ、ちゃんとお弁当持ってきてる?」 「はいなはいな!ちゃーんとお弁当…ってゴラァアァアアア!!!」 「ち、千鶴くん落ち着いてください…!」 「あーもう無駄だよあの二人は」 「えぇでも悠太くん…」 ああホラ、うるさい。 「…ったく、うるせぇなぁ」 「まあまあ要、心配したんだから」 「はあー?心配ー?」 「もしかしてオレたちと離れたい、だとか」 「………」 「ま、そゆこと」 そう言って4人のもとに入っていった悠太を見て、ふと思った。 何を言ってるんだろう、悠太は。 離れたいとか、離れたくないとか考えたことなかった。 だって、幼なじみだから。幼稚園からずっと一緒で、ずっと同じで。 ぶっちゃけこいつら以外とここまで仲良いやつはいない。多分みんなそうだろうけど。 「要くーん!置いてっちゃいますよー!」 春の声が、聞こえた。 一人で行く予定だったのにいつの間にか増えていて、その中に自分がいる。 ああ。こいつら、オレにとって幼なじみだけじゃなくて、大事な奴らなんだ。 けなしてるけど、笑いあえる唯一の存在か。オレを許してくれる、大袈裟だけどそんな感じ。 「ったく、しょうがねぇな」 本格的に夏が、始まる。高校生最後の、夏が。 |