しあわせなあなた方の傍に居たくて


「はぁ?喜助んとこ行くんか」

「うん、行って来るね」

「ほな、これお土産に持ってきー…ってちゃうわ!アホ!何時だと思ってんねん!」

「え?まだ11時だよ?」

「夜の11時やねんで!?サラっとまだ昼みたいに言うなや!」

「過保護…真子だってこの間この時間帯にコンビニ行ってたじゃない」

「それはコンビニだからや!お前、なんで最近喜助んとこによう行くねん」


くどくどくどくど煩いのは、仮面の軍勢の仲間の平子真子。なんでか知らないけど、物凄い過保護。
ひより曰く心配で仕方がないただの変態オヤジらしい。

今から会いに行こうと思っていたのは、随分前に私たちを助けてくれた人、浦原喜助さんだ。正確には、覚えていない。
もともと死神だった頃は違う隊だったし、真子たちとは仲良くやっていたけれど、十二番隊の隊長さんとは一切面識がなかった。
それに、虚化する時も、彼が居たことはぼんやりとしか覚えていない。ほとんどが真子たちに教わったからだ。
と言うよりも、何故か真子は私を彼に会わせようとしなかった。

そんな中、浦原さんのところに用事があると言って出て行った真子に一緒に行くと言えば、意外にあっさり承諾してくれてついて行ったときに、初めてちゃんと言葉を交わしたのだった。
ああ、そういえば浦原さんの髪の色は印象的だったな、と思ったけれど、前の姿とはなかなか随分と変わっていた。
まずだらしない甚平に下駄。変な帽子をかぶり、扇子をヒラヒラさせ、無精髭を生やしていた。

まあ上がってくださいよ〜♪と言われてお茶をいかついテッサイさんから受け取った。
なんだかその時の真子は何を思ったのだろう。用事をサッサと終わらせて、まだ居たいならおり、という実に珍しいお言葉を頂いて、私は浦原さんのところに残ったのだった。

それから、私と浦原さんはどんどん仲良くなっていった。
ただのアヤシイオジサンというレッテルは、一瞬にして剥がれた。何故なら、彼が色っぽいため息を吐きながら帽子を外した時、もうこの世(あの世?)の女性全員を夢中にさせてしまうような色気を出していたからだ。
その時、私は完全に浦原さんに惚れたのだと思う。
慣れた手つきで煙管を吸う綺麗な口元とか、骨ばった細長い指だとか、だらしないと思えた甚平の合間から見える綺麗な胸元だとか、他にも色々な要因はあった。

その日、遅くなって帰った私を真子はじとーっとした目で見てきた。
そして聞いてきた。なんかあったんちゃう?と。
だから素直に答えてやったんだ。私、浦原さんがかっこいいと思う。惚れちゃったかも、と。
すると真子は私の両肩をがしっと掴んで、ゆっさゆさ揺らしながら「何があったんや!?」「まさか惚れ薬でも飲まされたんちゃうんか!?」「しっかりしィや!!」などと尋問をした。
アチャーと頭を抱えながら、せやから会わせたなかってん。今日のは不覚やった。喜助が昔からお前のことが可愛い可愛い言うから…

「真子、昔からって?」

「…まだ隊長だった頃から喜助はお前のこと気になってる言うてんねん」

「話したことなかったのに?」

「…そりゃ、俺がどれだけ努力して喜助とお前を会わせないようにしたと思ってんねや」

「…余計にどういうことよ」

「おま、そこまで俺に言わせたいんか…」

「え?なーに?聞こえな〜い」

「もうなんでもないわ…もう好きにしぃや…」

「あ、ほんと?真子の許可貰ったしこれから好きなだけ会いにいこ〜」

「ちょ、ちゃうで!?別に好きな時に会っていいとか言ってひんからな!?」

「この過保護バカ」


そういうわけで、好きな時に浦原さんに会いに行けるようになったとさ。
それなのに結局は過保護な真子なわけで。今夜もなかなか許可をくれない。


浦原さん、あともうちょっと待っててね。真子を説得してから行かなきゃいけないの。

(お題:不完全燃焼中)

***

あれ?これ浦原さんの話?(笑)
ごめんなさい(笑)