パプリカ


この男と出会って数ヶ月が過ぎた頃

今日も学校帰りにふらふらとこの駄菓子屋に寄る



「浦原さあーん」


ガラッと戸を開けて店長の名前を呼んだ

いつもの光景だが、誰も いない


「…誰もいないのかな…」

どうせ寝てるんだろうと思って失礼しますと小さな声で言ってから入った




改めて見ると、不思議な場所だ


最初はおじいさんが経営してるもんかと思ったら若い男の人だし


それに


好きになるなんて考えてなかった







ぺたんと畳の上に座る
いつも浦原さんが座っている場所




「浦原さん…」



なんだか特等席に思えてきて頬が緩んだ





PM 6:00



ガララッ


「ただいまー…?」



こりゃなまえさん来てるんスかねえ…





居間を覗けば、ころんと横になってる制服姿のなまえさんがいた



「風邪引いちゃいますよ〜」

なまえさんの無邪気な寝顔にクスッと笑いながら自分の羽織をかけた




「ん…浦原…さん?」



ゆっくりと起き上がってアタシの名前を呼ぶ



不思議っスね




アタシがこの子に恋をするなんて
考えてなかったっス




「なまえさん、おはよう」

そう言って、おでこにキスを落とした





まるでパプリカ



(うわあうわあ!おでこにちゅー!!!)
(顔が真っ赤っス…)