プロローグ
あたしの遠い遠い記憶の中にあるのは、大好きだったあの人が死んでしまったこと。そして、仲間が殺されそうになりそれをかばい自分が死んだこと。それだけだった。
でもそれは昔の話。今あたしは吸血鬼殲滅部隊「月鬼ノ組」グレン隊の日比野風香だ。
8年前のあの日、世界は一度滅んだ。
だけど、まだ人間は吸血鬼に負けたわけじゃない。
何度道をふさがれたって。
何度失敗したって。
何度転んだって。
人間は何度だって立ち上がるんだ。
たとえそれが吸血鬼にとってどんなに愚かな行為だろうと。
たとえそれが吸血鬼にとって痛くもかゆくもなかろうと。
人間には、“諦めない強さ”があるのだから。
それがある限り、人間は決して吸血鬼には負けない。あたしはそう考えている。
だって、諦めなければ道はいずれ開くものでしょ?