日常?いいえ、非日常です
なんでも、異世界にトリップできるという機械を開発したらしい。土方さんに聞かされた話は、普通は信じられないような内容だった。
だって異世界って…トリップって…
『…もしかして土方さん、頭沸いたのかな』
「おい声に出てんぞ」
『やっべ』
「ふざけろ」
『いだだだだ!アイアンクローはっ!アイアンクローはやめよう!』
指が!こめかみに食い込んでるよ!
数分後、ようやく手を離してくれた土方さん。やばいこれ顔凹んでないかな?大丈夫かな?
『…で?異世界にトリップできる機械がなんだって?あたしその話初耳なんだけど』
「言ってねェからな」
『言えよ』
「上司に命令か?いい度胸してんな」
『ウソですウソです』
またアイアンクローをかまされそうになったあたしは土下座をする勢いで謝った。いや、実際には土下座なんてしてないんだけど。
「で、それが攘夷浪士に盗まれたらしくてな」
『は?』
「慌てた
『いや、だからあたしその話初耳なんだけど!?なにそれ超おおごとじゃん!』
「ついさっき総悟が見つけたんだがな」
突然のカミングアウトである。盛大にコケたあたしは悪くない。
『いやっ…あのっ…はぁ!?』
「だから、ついさっき俺が見つけたんでさァ」
『だったらなんで早く幕府にそれを返さないの!?面倒事が増えるのは勘弁なんだけど!!(見つけた!?早く幕府に返さないとじゃん!!)』
「本音隠せてねェよ」
スパァァン!と勢いよく頭を叩かれる。しかも書類で、だ。
若干涙目になりながら、あたしは彼らに疑問をぶつけた。
『でも、見つけたんならなんでさっさと渡さないの?早く返した方がいいんじゃ…』
「……てんだよ」
『ん?』
「壊れてんだよ」
『え?』
「壊れてんだって」
『は?』
「故障してんだって」
『Pardon?』
「だから故障してんだって言ってんだろーがァァァ!!」
今度は殴られた。グーで。痛い。これが仮にも女にすることだろうか。死ねよ土方。
『故障?なんで?総悟が壊したの?』
「俺がそんなことするわけねェだろィ。ふざけたこと言ってっと犯すぞ」
『やべえこのドS目がマジだ』
「俺が見つけた時にゃもう壊れてたんでさァ。壊れたまま幕府に返すわけにはいかねーだろィ」
『うん』
「だから、風香に確かめてもらおうと思って」
『うん。……うん?』
「平たく言うと、風香にはこれから異世界に行ってもらいまさァ」
『は?いやあの…は?』
混乱するあたしをよそに土方さんや総悟は話をすすめている。
『え?は?ちょちょちょ、なに?異世界?行くの?あたしが!?』
「だからそう言ってんだろーが」
『はァ!?なにそれ!てか無事に帰ってこられる保証は!?』
「ある、……とは言い切れねェな」
『やめてくれるその微妙な言い方!』
「じゃああるって言ったら行くんですかィ?」
『行かないけど?』
「……」
『ちょおお!力づくでなんか機械の方に押すのやめてくれる!?』
「とりあえず機械に近づいたら異世界に行けるらしいんで」
『近藤さん助けてェェェ!』
「残念だったな、近藤さんは今絶賛ストーキング中だ」
『使えねェなあのゴリラ!』
チィッと舌打ちをする。
てかマジでこれやばいって。マジで異世界に行っちゃう五秒前だってこれ。
「まぁきっとなんとかなるだろーから、頑張ってくだせェ」
「行ってこい」
『ふざけんなァァァ!!』