▼ ワレモノ注意
「では、勝負の内容を説明しよう」
道場から出たあたし達は、彼らの正面に立ち向き直った。
「君達の側から無理矢理押しかけてきたんだ。ルールは柳生流に従ってもらう。異存はないな?」
『上等』
「ぼっちゃん剣法がコラァ。オセロでもやろうってんじゃねーだろうなコラァ」
「言っとくけどオセロ強ェーぞ私は!!四つ角全部とるぞォォォォ!!なめんなヨ!!」
「ここに皿がある。これを各々自分の身体のどこかにつけてくれ」
勝負は七対六のサバイバル戦で、柳生屋敷全てを使って行う。この敷地内であればどこに行ってもよし。敵の大将の首を先にとった方が勝ち。
つまり、今から配られる皿は戦でいう首級。これを割られた人はその場でリタイア。
でも、たとえ何枚皿を割ろうが大将の皿を割らない限りは勝利にはならない。逆に言えば、仲間が何人やられようが大将さえ生き残っていれば負けにはならないということ。
「大勢で一人を囲もうが逃げ回ろうがいいってわけかィ。まるで喧嘩だな。いいのか?型にはまった道場剣法ならあんたら柳生流に分がある。俺達ゃ喧嘩なら負けねーよ」
「これは柳生流に伝わる合戦演習。我々は年に一度これをとり行い士気を高め有事の際幕府がため戦にはせ参じる準備を整えているんだ。柳生流がただの道場剣法でないところをお見せしよう。君達の誇るその実戦剣法とやらを完膚なきまでに叩き潰して全ての未練を完全に断ち切ってやる」
『上等だよコノヤロー』
「ちよっと待て。七対六ってそっちは五人しかいねーじゃねーか。騙そうたってそうはいかねー」
「オイなめんじゃねーぞ、数くらい数えられんだヨ!!あやうく騙されることだったアル!!……七対五ってこっちの方が有利だろーがァァ!!アレ?こっちの方が有利アル…ゴリラぁぁぁ!!有利だぞどーするコレ」
「さ…さっき言った事はナシの方向にしろコラァァァ!!」
「さっき言った事はナシにしろォォ!ナメんじゃねーそコノヤロー!」
先に宣言しておこう、と九兵衛は言った。
「僕とこの柳生四天王、この五人の中に大将はいない。我等の大将は既にこの屋敷のどこかにいる。我々を相手にせずそいつを探して倒せば勝てるぞ」
「なにを…」
「あっと君達に教える必要はないですよ。精々僕らにバレないよう気を配ってください」
『ちょっと待ってよ。七対六って人数的にアンタらの方が不利…』
「そのへんはご心配なく。どのみち私達はあなた方の皿を全て割るつもりなので、大将が誰でも関係ありませんから」
『「「「あんだとォォ コルァァァ!!」」」』
「それでは勝負開始は20分後」
「うるせー10分で初めてやるよ!!」
「しっかり準備しておいてください」
『するかァ!ぶっつけ本番でいくわボケェ!!』
第六十七訓
ワレモノ注意
prev / next