銀色ジャスティス | ナノ


▼ 火曜7時は坂田家を食卓で

お妙が小柄な少年と知り合いだということはわかった。それから少し話をして、二人で帰っていった。

………なーんて、昨日あったことを今隣にいる近藤さんに話せるわけないじゃないか。


『…って、なんであたしまで付き添わなきゃいけないの…』

「だって一人じゃ不安なんだもん!恐いんだもん!」

『三十路がだもんとか言うんじゃないよ気持ち悪い』

「ひどい!風香ちゃん毒舌じゃない!?」

「二人とも緊張してんのか?まァ無理もねーか、見合いなんて初めてだもんな」

『とっつぁんあたしは見合いしないよ』

「実はよォ、俺も母ちゃんとは見合い結婚でね。そりゃ緊張したもんよ。見合い写真よりずっとべっぴんでよう、すっかり舞い上がっちまってな。実際見合い写真なんざアテにならんぜ、風香ちゃん 近藤。これもちょっとゴリラっぽく写ってるがな、実際はただの彫りの深い美人だ」

「ゴリラっぽいっていうかゴリラだよね。純然たるゴリラだよね」

「違げーよアレだよ。写真撮影は力入っちまうもんだろーが。かしこまってゴリラっぽくなっちゃったんだな〜コレ」

「かしこまってゴリラって何!?身体中毛だらけになるかしこまり方って何!?」

「いい加減ハラ決めろよ、近藤。ぶっちゃけこの縁談は政略結婚を狙ってる。猩猩星と地球は外交で衝突をくり返してばかりいる。この事態を収拾するためにお前が選ばれたのよ。目には目を、ゴリラにはゴリラをだ」


ねぇ〜、ととっつぁんに言われてああうんそうなんじゃない?と適当に返事をした。どうせモノホンゴリラが姐さんになんだろ?あー、やる気なくすわー。


「頼むぜ近藤。お前に地球の命運がかかってる。わざわざこんな立派な料亭まで用意したんだ。絶対に王女をオトせ」

『でもとっつぁんこれゴリラ…』

「だから写真は気にするなっていってんだろーが。大体お前らが思ってるより3倍美人だと思って間違いねェ。おじさんを信じろ」

『誰が信じられるかクソ』

「え?何か言った?」

『なにも』

「そうか?よし、じゃあいくぞ。失礼します」


襖を開ける。そこには――思っていたより3倍デカイゴリラがいた。





第六十五訓
火曜7時は坂田家を食卓で





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