▼ そういう時は黙って赤飯
「もう、男の子がそんなにメソメソしないの。それでもお侍さん?」
「妙ちゃんもじーちゃんと同じ事言うんだね。侍侍って…お侍ってそんなに強くなきゃいけないの。僕なんかチビチビっていっつもいじめられてるし、女の子の妙ちゃんよりちっちゃいし。こんなチビで弱虫な奴がお侍なんてなれるわけないんだ」
「大人になったら大きくなれるよ」
「なれないね。だって父上もじーちゃんも僕の一族はみんなちっちゃいんだ」
「ちっちゃくたっていいじゃない。山椒は小粒でピリリと辛いっていうでしょ?」
「妙ちゃん…」
「私のデータによると、社長さんとか大物には結構背か小さい人の方が多いのよ」
「どこのデータだよ、妙ちゃん」
「そういう人の“股の玉”になれってお父上に言われてるんだ」
「“玉の輿”だよ妙ちゃん。もうなんか色んなものがグチャグチャだよ」
「それにみんなより背がちっちゃいなら、九ちゃんは誰よりも心の大きな侍になればいいんだよ」
「…じゃあ妙ちゃん…僕が心の大きな強い侍になったら、妙ちゃん…僕の……僕の股の玉に…」
第六十四訓
そういう時は黙って赤飯
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