▼ 嫌なことは何度でも起こる
見廻りをサボっていたあたし。しかしそれが土方さんに見つかってしまい説教を食らった。
腹いせにザキに八つ当たりでもしようかと考えたあたしはザキの部屋まで足を運ぶ。だがその途中で総悟にバッタリと会ってしまった。そして“マヨネーズの中身をカスタードに替えた”犯人にされた。もちろん説教だ。やってない、なんて言葉はきいてくれなかった。
『…なんで濡れ衣なのに説教された挙句買いに行かなきゃなんないの?マジ意味わかんない』
あたしの頭には大きなコブができていた。こんな頭で大江戸スーパーまでマヨネーズを買いに行かなきゃならないなんて恥さらしもいいとこだ。
『ああもうホントムカつ、』
─ドシャァァッ
穴に落ちた。
第六十一話
嫌なことは何度でも起こる(オリジナル)
『〜〜っ!』
いったァァァ!!ちょ、コレマジ痛い!!擦りむいた!腕擦りむいた!!あ、血出てる。痛い。
そんなことを思ってる時だった、何かの気配がしたのは。
「あー!お前あん時の奴!」
「オカマの奴らと一緒にいた女!」
気配の正体は、以前てる彦くんをいじめていた二人組…よっちゃんとけんちゃんだった。
よりによってコイツらかよ、等とは思ってはいけない。今腕が痛くて穴から出られない状態であるあたしはコイツらに助けてもらうしかないのだ。不愉快だけど。
『あの時はツレが悪いことしたね。謝るよ。ってワケで助けてく――』
「イヤだねー!」
「誰が税金どろぼーなんて助けるかよ!バーカ!!」
『んだとコルァァ!!』
「「ぎゃあああああ!!」」
ふざけんなよ!お姉さんが頼んでるのにそれを無下にするなんて!!しかもバカって言いやがったあのガキ!しかも脱兎の如く逃げたし!……まぁ怒りで痛みを忘れて穴から出れたからいいけど。
『ッチ…なんであたしがガキ如きでこんな体力使わなきゃなんないの?マジ意味わかんない』
腕は地味に痛いし膝も擦りむいたし。擦り傷って地味に痛いよね。この痛さが嫌だよね。
ふと、甘い匂いが香ってくる。この甘い匂いは…、
『クレープだ!!』
そう、あたしの好物であるクレープの匂いだ。しかもセール中らしい。超ラッキーじゃん。
やったー!と心の中でガッツポーズをとる。マヨネーズ?そんなのあとでいいんだよ。とりあえず今は目の前にあるクレープに専念しなければならない。
しばらく並んでいると(まあセール中だから行列である)、肩を叩かれた。それは店員らしき人だった。
『? はい、なんですか?』
「大変申し訳ございませんが、ここまででクレープは完売となります」
『……え?』
ここまで、というのはあたしの前の人まで。どうやら一人で二個、三個を頼む人がいたらしく数が足りないんだとか。
え?え?じゃあなに?あたしが並んでたのは無駄だってこと!?
「申し訳ございません。またのご来店をお待ちしております」
『…アア…ハイ……』
そのあとあたしはマヨネーズを買うために歩きだした。
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