銀色ジャスティス | ナノ


▼ サンタなんていねーんだよって言い張る奴こそホントはいるって信じたいんだよ

雪が降る寒い中、あたしは見廻りをしていた。
寒い。こんな寒いんじゃ攘夷浪士だって家に引きこもってるよ。そうに決まってる。
なのになんで土方さんはマヨネーズ買って来いなんて言うかなぁ!見廻りのついでだ、じゃねェよ!こっちは寒いんだよ!自分で買えよホント。
まァお金は余分にもらってるから肉まん買ったけど。


『あー、寒。肉まんだけじゃなくてあんまんも買っておけばよかった。つーかマヨネーズ重いんだけ、ど』



─ドガシャ



坂道で盛大にコケた。
うっわ恥ずかし!周りに誰もいなくてよかっ……、


「見ーちゃった見ーちゃった」

『ゲッ』


よりにもよって銀時に見られるとか何この屈辱。


「ダッセ!坂で転ぶとか超だせ……、」



─ドガシャ



『……』

「……」

『“ダッセ!坂で転ぶとか超……”』

「わーわーわー!!」


銀時は赤面していた。そりゃそうだ。ダサいと言っていたことを自分がしてしまったんだから。
ふと下を見ると何かが銀時の下敷きになって潰れていた。どうやら肉まんらしい。


「…あーあ、潰れちまったよ」

「あーあ、潰れちまったよ!」


坂の下を見ると赤い服を着たオッサンと赤い鼻をつけたオッサンがいた。何やってんの、通行の邪魔だぞ。


「どーすんのコレ!お前のせいだよコレ!!」


どうやらソリを壊したとかそんなんでもめてるらしい。


「こんなソリ メチャメチャにしちゃってさァ!!もう今年終わりだコレ!全部お前のせいだからなコレ!!」

「ふっざけんなよクソシジー!坂道下る時は必ずソリから降りるっていう約束だっただろーがァ!!こっちはもうソリを引いてるというより追われてるカンジだったんだよ。スネにガンガン ソリがあたってんだよ!血だらけなんだよもう!」

「そんなもんお前がソリを上回る速さで走ればいい話だろーが!!トナカイだろーが!!あん!?お前の親父はそりゃあスゴかったよ!坂道でもグングン ソリを引っぱってさ、そりゃあ立派なトナカイだった!」


何、痴話喧嘩?


「アンタえらい親父を気に入ってるようだけどな、親父は家でアンタの悪口ばっか言ってたから!言っとくけど!!」

「ウソつくんじゃねェ!カールと俺は主従をこえた戦友だぞ!!」

「いやマジ言ってたって!遺言が『アイツ ホントはヒゲ茶色』だったから!!」

「テメェェェェ!!デケー声で言うんじゃねェ!!クリスマスの時だけ白く染めてるなんてしれたら事だろーがァ!!」

「テメーで全部バラしてるだろーが!!」


二人は口喧嘩から殴り合いの喧嘩をしていた。もちろん警察であるあたしがそんなこと許せるはずもなく、喧嘩の仲裁に行った。


『ちょっとちょっとお二人さん。何やってんの。殴り合いなんてそんな…、いだっ!!』

「いだっ!!」

「てめえェェェ!何しやがんだ!!」





第五十六訓
サンタなんていねーんだよって言い張る奴こそホントはいるって信じたいんだよ





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