銀色ジャスティス | ナノ


▼ 鍋は人生の縮図である

外ではらはらと雪が降る寒い中。あたしと土方さんと総悟はこたつで鍋を囲んでいた。
テレビは紅白歌合戦が流れている。


「今年ももう終わりだな」

「早ェーな。もう嫌んなっちゃいますね。年をとるごとに早くなっていきますぜ、一年過ぎるのが」

『ホントホント。一年ってあっという間だね』

「この調子じゃジジイになった時はF1カーが通り過ぎる並みのスピードで一年過ぎるんじゃないですかね?」

『恐いこと言わないでよ、総悟』

「今年も色々あったもんな」

「そーですねィ。五十訓突破記念ということもあるしちょっと振り返ってみるか」

『ということで五十訓突破記念「あんな事もこんな事もどんな事もあったね」総集編スペシャルスタート』


箸をかまえるあたし達。


「…ちょっと…総集編って言ったじゃん。振り返ろうって言ったじゃん。誰か振り返れ、オイ」

「いや、でも鍋の火加減見なきゃいけないんで。俺見てるんで二人で振り返っちゃってくだせェ」

「鍋は俺が見るから総悟お前いけって。しか――」

「司会向いてるのは土方さんの方なんで自身もってください」

「遮んな!そして司会なんて向いてねェよ。つーかんなこと言われても嬉しくねーよ。風香、お前いけ」

『イヤ。だってよそ見してる間に肉食べられちゃうじゃないの』


あたしの言葉にしらける二人。
え、あたし何かマズった?


「ちょっ…もうホントさァ、いい加減にしろよオメーは。そんなしょうもねェ事俺達がするワケねーだろィ。ホントさァ、年の終わりにさァ、哀しくなるような事言わないでくれませんかィ?」

『ちょっと待って。なんであたし年下に説教されてんの?』

「確かにスキヤキなんて俺達滅多に食えやせんけど、一年の区切りにさァ奮発してみんなで楽しくつつこうって時にさァオメーって奴は…ホント俺情けなくなってきやした」

『いやなんで総悟が情けなくなってきてんの?』

「今のは風香が悪い。ホラ、謝れ」

『なんで!?』


「「………」」


『……。…んだよチキショー。ハイハイすいませんでした、ビンボくさい事言っ…』


あたしが頭を下げた直後、二人は鍋に飛びかかった。





第五十五訓
鍋は人生の縮図である





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