銀色ジャスティス | ナノ


▼ 少年はカブト虫を通し生命の尊さを知る

『……カブト虫狩り?』

「ああ、そうだ」


早朝。
あたしにしては珍しく早く起きた朝。そんな日にそんなことを言われては当然テンションは下がるワケで。


『なんで?どうして?それは虫嫌いなあたしに対しての嫌がらせなの?そうなの?そうなんでしょ?』

「実はな」

『アレ 無視?無視なの土方さん』


土方さんが話し出す。内容はこうだ。

将軍のペットであるカブト虫の瑠璃丸が森で生き別れてしまったので捕獲しろ、と。


『なんだビックリした。土方さんがカブト虫欲しいのかと思った』

「んなワケねーだろ。ガキじゃねーんだから」

『え?土方さんの心はいつでも中二で…いだだだ!!』


食い込んでる!指!頭に!食い込んでる!!


「悪いこと言う口はこの口か?ん?」

『そこ口じゃない頭!』





第四十四訓
少年はカブト虫を通し生命の尊さを知る





嫌だ嫌だと抵抗をしてみても無理だった。無理矢理連れてこられたよクソ。
みんなはみんなでカブト虫を捕まえるのに必死になっているのであたしも必死になってるふりしてぶらついてよう。そう思ってたら銀時達万事屋に会った。


「風香!久しぶりアル!」

『うん、久しぶりー。んで、アンタら何してんの?』


その格好――麦わら帽子に虫取り網に虫カゴ――はもしかしてもしかしなくてもカブト虫狩りなんじゃないだろうか。


「あ?アレだよ、カブト虫狩り」


やっぱりかー!だと思ったよ!だってその格好だもんね!気づくよね普通!

銀時達と歩いていると森の中にはハチミツを全身に塗りたくってる近藤さんがいた。


「銀サン帰りましょうよ。この森恐いです」

「身体中にハチミツ塗りたくってたネ」

「気にするな。妖精だ、妖精。樹液の妖精だよ。ああして森を守ってるんだよ」

「でもなんか見たことある人だったんですけど…。風香さんの知り合いですか?」

『知らない知らない。あんなゴリラ知らない』

「ゴリネ。ゴリだったネ」

「じゃあゴリラの妖精だ。ああしてゴリラを守ってるんだよ」


ゴリラを守ってるって意味わかんねェ。

森を歩いているとマヨネーズの残骸が目に入った。ふと目をそちらに向ける。そこには木にマヨネーズを塗りたくってる土方さんがいた。


「銀サン帰りましょうよ。やっぱりこの森恐いですよ」

「マヨネーズ木に塗りたくってたネ」

「気にするな。妖怪 魔妖根衛図マヨネーズだよ、アレは。ああして縄張りにマーキングしてんだよ」

「でも明らかに見たことある人だったんですけど。風香さんの知り合いですか?」

『知らない知らない。あんなマヨネーズの人なんか知らない』

「ニコ中ネ。ニコチン中毒アルネ」

「じゃ妖怪ニコチンコだ。ああして二個チンコがあるんだよ」

「いや二個チンコないですから」


そんな土方さんを無視して歩く。そして目にとまったのは木に留まってるデカすぎるカブト虫。


「ぬっ…うおぁぁぁぁ!!なっ…なんじゃありゃぁぁ!!」

「オイオイウソォ?ウソだろ!とんでもねェ大物じゃねーか!」

『あ、それ…』


あたしの静止もきかずに万事屋は木を蹴る。そしてカブト虫が落ちてきた。
喜ぶ万事屋。しかしそれはカブト虫ではない。それは…



「なにしやがんでェ」



総悟だ。


「お前こんな所で何やってるアルかァァ!!」

「見たらわかるだろィ」

「わかんねーよ。お前がバカということ以外わかんねーよ」

「ちょっ ゴメン起こして。一人じゃ起きられないんでさァ」

『バカでしょアンタ。バカでしょ』

「風香ひでぇや。とりあえず起こして」


総悟の作戦は“仲間のフリして奴らに接触する”というものだ。やっぱバカだわコイツ。

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