銀色ジャスティス | ナノ


▼ 扇風機つけっぱなしで寝ちゃうとお腹壊しちゃうから気を付けて

『462』

「何ですかィ、それ?」


あたしの呟きに総悟が反応する。


『今年の夏熱中症でぶっ倒れた人の数だよ』

「マジですかィ」

『マジだよ』


蝉がミンミンと鳴く声が屯所に響く。うるさいったらないわ。しかも今真昼だよ?暑い。死ぬ程暑い。


『土方さん、やっぱエアコン買おうよ。今年の猛暑は扇風機だけじゃ乗り切れないってコレ』

「バカ言ってんじゃねーよ。そんな金どこにあんだ?」

『幕府からちょろまかす』

「殺されるだろ」


まァね。


「大体、エアコンなんて買ったら隊士が屯所から出なくなるだろーが。電気代もバカになんねェ。つーわけで却下だ」


扇風機を独占するあたし。この扇風機はあたし達にとっての命綱だ。大切に扱わなくては。


「エアーをコンディショニングする暇があるならマインドをコンディショニングする術を覚えろ。心頭滅却すれば南極もまた北極だよ」

「トシ、言っとくが南極は南って行ってるけど別に常夏じゃないからな」

「あん?んなことわかってらァ。南極が常夏のパラダイスのわけねーだろ。つまり俺が言いたいのは心頭滅却してもアレ…何も変わらないよね」

「恥ずかしい!間違いを隠すために自論を捨てやがったよ!ひどいよこの人!上のやりとりがパーだよ!」


土方さんは扇風機の動きに合わせて身体を動かすあたしの頭をうちわの角で叩いた。ひどいこの人!あれ地味に痛いんだよ!?わかっててやってんだよ!?ひどくない!?


「大体こんな日に外出てみろ。エアコン買う前にバタンキューだ。こういう日はおとなしく屯所でゴロゴロしてるに限るんだよ」

「成程。じゃあ土方さん買ってきてくだせェ」

「殺すぞコラ」


総悟はあたしに向けられていた扇風機を奪い自分の方に向けた。


『…………』



─ぐいっ



「…………」



─ぐいっ



『「…………」』



─ぐいっ ぐいっ ぐいっ



「ハァー 頼みの綱は扇風機だけか。お前ら、大切に使えよ」



─ボキッ



『「「……………」」』


頼みの綱の頭が取れた。





第四十二訓
扇風機つけっぱなしで寝ちゃうとお腹壊しちゃうから気を付けて





prev / next

[ back ]