▼ 家政婦はやっぱり見てた
どこかの路地裏。
「え?誘拐?何が?誰が?どこで?」
「とぼけても無駄だ。貴様、あの女の愛人か何かだろ。二人で共謀して賀兵衛様の孫をさらい橋田屋の財産を狙うつもりだな」
「オイ何言ってんのこの人達?」
「あぽん」
「お前何言ってんの?お前」
そんな事を言われても記憶にない銀時は首をかしげる。誘拐?あの女?愛人?何の事やら。身の回りにいる女は、風香と神楽とお妙とストーカー女くらいだ。愛人なんて冗談じゃない。
「生きて捕らえよとのことだが男なら関係あるまい。斬り捨ててしまえ」
「オーイオイ!ちょっと待って!ちょっと待って!全然関係ないから!俺このガキ拾っただけだし誘拐とかなんとかワケわかんねェ!!なんなら今スグ返すよ!なっ?」
同意を求め銀時は勘七郎の方を向く。しかし勘七郎は銀時の着物の裾をぎゅっとつかんでいた。
「やれェェ!!」
「だーからしらねーって言ってんだろーが!オラ!返すぜこんなガキ!!」
刀を抜き斬りかかってくる浪士。銀時は勘七郎を宙に投げ、浪士のスキを突いた。
木刀で薙ぎ倒し、狙い通りに勘七郎を抱く。――のと同時に、木刀と刀が交じり合う。
「面白い喧嘩の仕方をする男だな。護る戦いに慣れているのかィ?」
「お前りのような物騒な連中に子育ては無理だ。どけ、ミルクの時間だ」
内心、銀時は焦っていた。コイツは赤子を片手に容易に戦える相手ではない。さてどうしようかと考えるがそれは杞憂に終わる。
「ククク イイ…イイよアンタ。獣の匂い…隠し切れない獣の匂いがするよ。あの人と同じ」
「!」
「片腕で闘り合うには惜しいねェ。行きな」
それは男が刀を下ろしたからだ。戦う気はないのだと。
銀時は逃げる。
「岡田ァァ!貴様何をやっているかァァ!!」
「追えェェ!逃がすなァァ!!」
浪士は銀時を追いかける。
似蔵が口角をあげニヤリと笑ったのに気づく人物はいなかった。
第四十訓
家政婦はやっぱり見てた
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