▼ 襟足の長さと子供の憎たらしさは比例する
「一応家に連絡しといたから、もうスグ家族が迎えに来てくれるだろ」
「あ?余計なことすんじゃねーよ」
『え?家に連絡しちゃったの?マジで?』
土方さんに書類燃やしたことバレたらどーしよ泣ける。つーか殺されんじゃねあたし。
「………悪かったな、俺の勘違いでこんな目に合わせちまって」
「まァ気にすんなや。俺も見苦しいもの見せちまったしおあいこにしよーや」
『ホントだよ死ねカス』
「ちょ、ひどすぎだろ!お前は何回も見てんだろーが」
バキィッ
『いつの話してんだよ。卑猥なんちゃら罪で逮捕すんぞ』
あたしは銀時を殴った。それがさっきのバキィッという音である。
「よくやった風香。それにしてもオメー、ここに来てから股間の話しかしてねーぞ!!」
ちなみにあたしと辰巳は少し仲良くなった。同じ苦労人だねそうだね、みたいな。
「…ったく、変な野郎どもだよ」
『え、その野郎どもの中にあたし含まれてんの?何それ泣ける』
「オイオイどこ行くんだ?」
歩き出した辰巳に声をかける銀時。そしてあたしの言葉はスルーなのね。
「放火魔捕まえに決まってんだろ。こんなことでへこたれる俺じゃねェ。俺ァ江戸一番の火消し目指してんだ。
一度振り返りそう言うと、再び歩き出した。
「このドラ息子ォォォ!!」
ズバン、と神楽は銀時に飛び蹴りを決めた。
「アンタどこで火遊びなんて覚えたあるかァ!!そんな子に育てた覚えはないネェェ!!私情けないヨ〜。おとうさんに何て言えばいいの〜。ハッ その女はまさかアンタの恋人!?許さないネ!!結局その女にたぶらかされたアルかァァァ!!」
銀時に飛び蹴りを食らわせた神楽は銀時の上に跨がり頬を何度も平手打ちした。そしてオイオイと泣き出したと思ったらなぜか巻き添えを食らった。解せぬ。
「お前どこで覚えたんだそんなセリフ!」
「『眠らない街江戸八丁堀24時』でやってた万引きGメンの戦い≠ゥら抜粋」
「抜粋じゃねーよ!変なモンばっか覚えやがって。ロクな大人になんねーぞ!!」
銀時がそんなモンばっかみてるからでしょ。
刹那、後ろからドドドドド…という音が聞こえてきた。それは真っ直ぐこちらに向かってくる。
……嫌な予感がする。
そう確信したあたしは銀時を無理矢理起こし盾にした。
「こんの不良バカ娘ェェェ!!」
どうやらあたしの予感は当たっていたようで、総悟の蹴りは銀時に命中した。
「あ、ヤベ。旦那に当たっちまった…。オイ風香、なんで避けるんでさァ」
『そりゃああんな突進きたら誰でも避けるでしょーよ』
「だからって俺を盾にすることねーだろ!!」
『メンゴメンゴ☆』
てへぺろ、と舌を出すと銀時と総悟は二人そろって「おえええ…」と言っていた。どーいうことだコラ。
「つーか、書類捨てんのにどんだけ時間かかってるんでさァ。土方さんにバレちまいましたよ、風香がサボってること」
まァ幸いにも書類のことは気づかなかったみたいですが、と続ける総悟にあたしはそっか、とだけ返す。
「俺は風香を探しにいくっていう口実で来やしたが、風香は言い逃れできやせんぜ」
『ふざけんなお前も同罪だ』
ふと、銀時が歩き出したのに気づいた。
「だから早く屯所に…」
『ごめん総悟』
すっ、と総悟の横を通りすぎ何も言わずに一人で辰巳を探しにいこうとした幼馴染みを追いかけた。
「死んでも俺ァ知りやせんぜ〜」
気の抜けた総悟の声。
……ホントそれ冗談にきこえないわ。なんて思いながら、あたしは歩みを進めた。
続く
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