銀色ジャスティス | ナノ


▼ 襟足の長さと子供の憎たらしさは比例する

め組にて。


「だァ〜からそれはお前 俺の聖水でだな、火を消そうとしてただけなんだっつーの」

『何が聖水だこの変態』

「ウソつくんじゃねェェ この変態放火魔が!!汚ねーもん見せやがって。トラウマ決定だよチクショー」

「乗りこえてこい!人はトラウマを乗りこえて強くなっていく」


トラウマ産み落とした奴に言われたくないんだけど。


「てめーら、女だと思ってなめてたらいてまうぞコラァ!?こちとら火消しになった時から性別なんざティッシュにくるんで捨てたんだコノヤロー!!」

「だったらオメー、股間の一つや二つ見たって問題ねーだろうが!!ティッシュに優しく包んで捨ててくれや!!俺だってちょっと恥ずかしーんだからな!」

「そっちの話じゃねェ!!放火の話だよ!!」

「だからやってねーって言ってんだろ!!」


背中合わせで縄に縛られているあたしと銀時。辰巳はそんな銀時の胸ぐらをつかみあげる。そしたら当然あたしも巻き込まれるワケで。


『ちょ、ギブギブギブギブ!!』


辰巳が銀時の胸ぐらをつかむ=銀時が後ろに倒れてくる。
銀時が後ろに倒れてくる=あたし潰れる。


『重い!!重いって!!死ぬよコレ!!息絶えるよコレ!!』


ただでさえ今は銀時に近づきたくないのに背中合わせで座らされるし放火魔に疑われるしあたし警察なのにどーいうこったい。


「なんだなんだ、うるせーな。こちとら非常の時のために睡眠とってんだよ。静かにしろ、バカヤロー」


きこえてくる第三者の声。おそらくめ組の人達だろう。なんせめ組の羽織を着てるから。


「みんな!放火魔捕まえたぜ」

「どーせまたハズレだろ?今週だけで八人も無実の奴つれて来てんだぜ。放火魔しょっぴくだかなんだかしらねーけどよ、同心気どりもたいがいにしとけや。余計なマネして周りに迷惑ばっかかけんじゃねぇ、バカヤロー!」

「火消しは火事を未然に防ぐのも仕事だろーが!!こいつらは間違いねーよ、ゴミ捨て場が火元っていう手口も放火魔と同じ…」


辰巳の言葉を遮ったのは、火事のサイレンとそれを伝えるアナウンスだった。どうやら三丁目の豆腐屋の横のゴミ捨て場のようだ。


「よし、野郎ども行くぞ!!」

「「「はいよ!!」」」

「だから言ったじゃん、だから言ったじゃん」


銀時、なんでお前は二回繰り返した。不思議だぞ。


「そんな」

「辰巳よォ。お前も女だてらに周りに負けねーよう必死なんだろーが、完全に空まわってんだよ。しょせん女にゃ火消しなんざ無理なんだって。悪いこたァ言わねーから足洗え。あと現場にも足手まといだから来なくていいぞ」


多分め組で一番偉いであろう人は、振り返り辰巳にそう言い放った。そして今度は本当にめ組を出ていった。
その時辰巳は、拳を握りしめていた……。

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