銀色ジャスティス | ナノ


▼ 男にはカエルに触れて一人前みたいな訳のわからないルールがある

歩いて数分。なぜかパチパチと火を焚くような音がきこえた。音がする方を見ると、総悟が禽夜を十字縛りにしその下で焚火をしていた。


『総悟アンタ…っ 何してんの!?』

「(そうだ風香、もっと言ってやれ)」

『何でそんな楽しそうなことにあたしを誘ってくれないんだよォォォ!!』

「そっちかよォォォ!!」


スパァァァンと勢いよく頭を叩かれた。ヤベェコレマジで痛い。血出てない?大丈夫?


『いてて…。あ、総悟コレ死んでないよね?』

「もちろんでさァ。要は護ればいいんでしょ?これで敵おびき出してパパッと一掃。攻めの護りでさァ」

『なーる』


ぽんっと手を叩く。


「貴様ァ、こんなことしてタダですむと…もぺ!!」

『うっせーよカエルええから黙っとれ』


総悟から薪を少しもらい禽夜の口に突っ込む。


「土方さん、俺もアンタと同じでさァ。早い話、真選組ここにいるのは近藤さんが好きだからでしてねぇ。でも何分あの人ァ人が良すぎらァ。他人のイイところ見つけるのは得意だが、悪いところを見ようとしねェ」


そーだねぇ…そのとーりだ。


「俺や土方さんみてーな性悪がいて風香みてーなバカがいて。それで丁度いいんですよ、真選組は」

『オイコラちょっと待て総悟。バカってなんだバカって。言っとっけどあたしお前より年上だぞコラァ』

「俺より身長低いですけどねィ」


うっさいよ!!


「あー、なんだか今夜は冷え込むな…。薪をもっと焚け総悟、ついでに風香」

「はいよっ!!」

『ついでは余計だコノヤロー』

「むごォォォォォ!!」


何コレ楽しい。


「も゙ぐらっはめっそ」


刹那、チュインと音を立てて何かが禽夜の微笑みをかすった。


「天誅ぅぅぅ!!奸賊めェェ!!成敗に参った!!」


あ、来た来た。つーか額に天誅って書いてあるハチマキ巻いてんだけどこのオッサン。イイ年して恥ずかしくねーのかよ。


「どけェ 幕府の犬ども。貴様らが如きにわか侍が真の侍に勝てると思うてか」


アンタらが真の侍?ハッ 笑わせんな。


「おいでなすった」

「派手にいくとしよーや」

『先にケンカ吹っ掛けてきたのそっちだかんな?後悔してもおせーかんな』


あたし達は刀を構える。


「まったく喧嘩っ早い奴等よ」

『「「!」」』


その時、聞きなれた声が聞こえた。


「三人に遅れをとるな!!バカガエルを護れェェェェ!!」


そこにいたのは着流しを着崩した近藤さんで。ああようやく目が覚めたんだと安堵した。


「いくぞォォォ!!」


土方さんの掛け声とともに、あたし達は駆け出した。



***



後日。
大江戸新聞には『おてがら真選組』というタイトルで記事に載っていた。


『普段はチンピラだのなんだの言われてるけど、真選組ウチだってやる時ゃやるんだよ』


人知れず呟いた。







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