▼ コスプレするなら心まで飾れ
まわりには仲間だった奴らの死体が転がっている。
『死なせないから…絶対、死なせないから。必ず助けるから』
――捨てちまえよ
ガイコツがしゃべる。
――そんなもん背負ってたらてめーも死ぬぜ。どーせそいつァ助からねェ
うるさい。
――てめーにゃ誰かを護るなんてできっこねーんだ。今までだって大切なもんを護りきれたことがあったか?
うるさい。
――目の前の敵を斬って斬って斬りまくって、それで何が残った?
何…が。
――ただの死体の山じゃねーか
やめて。
――てめーは無力だ。もう全部捨てて楽になっちまえよ…
やめて。
――お前に護れるものなんて何もねーんだよ!!
***
『――!!』
ガバッと布団から起き上がる。……アレ?布団?
「起きたか。ずいぶんとうなされていたようだな。昔の夢でも見たか?」
襖を開けて銀時とヅラが部屋に入ってくる。
『なんで二人が…、そうだ!!』
新八と神楽のことを思い出す。急いで起き上がろうとしたら身体中に鋭い痛みが走り顔を歪める。
「無理はせぬがいい。銀時よりマシだがお前も相当だぞ、風香。身体中傷だらけじゃないか」
『そりゃ、仕事が仕事だからね』
話をきくかぎり、銀時は左腕と肋骨が何本かダメらしい。
「むこうはもっと重症だ。銀時がかばったおかげで外傷はそうでもないが麻薬にやられている。死ぬまで廃人かもしれん」
やっぱやってたのか、ハム子。
「というか、貴様らはなんであんな所にいたんだ?」
『というか、なんでアンタに助けられてんの?あたし達は』
「というか、この前のこと謝れコノヤロー!」
「というか、お前らはコレを知っているか?」
ヅラの手には袋に入った粉があった。
「最近巷で出回っている転生郷≠ニ呼ばれる麻薬だ。辺境の星にだけ咲くと言われる特殊な植物から作られ、嗅ぐだけで強い快楽を得られるが依存性の強さも他の比ではない」
『流行に敏感な若者の間で出回っていたが皆例外なく悲惨な末路をたどってるっていう、あの転生郷?』
「そうだ。天人がもたらしたこの悪魔を根絶やしにすべく我々攘夷党も情報を集めていたんだ…。そこにお前らが降ってきたらしい。俺の仲間が見つけなかったらどうなっていたことか…」
マジか。敵だけど今だけ感謝だわ。
「…というか、お前らはなんであんな所にいたんだ?」
「というか、アイツらは一体なんなんだ?」
「宇宙海賊春雨=B銀河系で最大の規模を誇る犯罪シンジケートだ!」
春雨か…。あたしが真選組だってバレなかっただけ不幸中の幸いだ。
「奴等の主だった収入源は非合法薬物の売買による利益。その触手が末端とは言え地球にも及んでいるというわけだ。天人に蝕された幕府の警察機構などアテにできん」
それ言っちゃう?警察の前でそれ言っちゃう?
「我等の手でどうにかしようと思っていたのだが、貴様らがそれほど追いつめられる位だ…よほど強敵らしい。時期尚早かもしれんな」
銀時が縁側まで歩き、あたしもそれに続く。
「オイ、きいているのか?」
「仲間が拉致られた。ほっとくわけにはいかねェ」
「その身体で勝てる相手だと?」
その言葉に銀時はこう返す。
「人の一生は重き荷を負うて遠き道を往くが如し=v
『昔ねェ、徳川田信秀っていうオッさんが言った言葉でさ…』
「誰だそのミックス大名!家康公だ、家康公!」
あれ?そーだっけ?
「最初にきいた時は何を辛気くせーことをなんて思ったが、なかなかどーして年寄りの言うかこたァバカにできねーな…」
荷物ってんじゃないけど、誰でも両手に何か抱えてるもんだ。けどかついでる時にゃ気づきやしない。
その重さに気づくのは全部手元からすべり落ちた時。もうこんなもん持たないと何度思っただろう。なのに。
なのに、またいつの間にか背負いこんでる。
「いっそ捨てちまえば楽になれるんだろうが、どーにもそーゆ気になれねー。
「仕方あるまい、お前らには池田屋での借りがあるからな。ゆくぞ」
ヅラはあたしと銀時の隣に並ぶ。
「片腕とそんな傷だらけの身体では荷物などもてまいよ。今から俺がお前の左腕だ」
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