▼ べちゃべちゃした団子なんてなぁ団子じゃねぇバカヤロー
神楽は定春にかんざしの匂いをかがせる。どうやらこれで探すらしい。いや無理だろ。
『五十年もたってんだよ?匂いなんか残ってないでしょ』
「わからないヨ。綾乃さん、もしかして体臭キツかったかもしれないアル」
「バカ。別ぴんさんってのは理屈抜きでいい匂いなするものなの。いや…でも別ぴんのくせに体臭きついってのも、完璧な女より逆になんこう燃えるものが…ん」
定春についていったあたし達。定春が立ち止まった場所は……
「オイ定春!お前家戻って来てんじゃねーか!!散歩気分かコノヤロー!!」
万事屋だった。定春は万事屋の下にあるスナックお登勢の扉を叩く。
『銀時、定春扉叩いてるよ』
瞬間、ガラッと扉が開く。そこにいたのはいつかのお登勢さんだった。
「なんだよ、家賃払いに来たのかィ」
え?家賃?
「お前 こちとら夜の蝶だからよォ、昼間は活動停止してるっつったろ。来るなら夜来いボケ」
そしてあたしに気づいたお登勢さん。
「アンタは前に銀時に会いに来た……真選組だったのかィ」
『そーです。改めまして、真選組零番隊隊長 日比野風香です。以後お見知りおきを』
「こちらこそよろしく頼むよ」
話していると銀時と神楽が「いやいやこれはないよな」「ナイナイ」と言っていた。綾乃ってツラじゃねーもんな、と。そしてなんで本名知ってるんだとお登勢さんの爆弾発言。
「ウソつくんじゃねェェェ ババァ!!オメーが綾乃のわけねーだろ!!百歩譲っても上に『宇宙戦艦』がつくよ!!」
「オイぃぃぃ!!メカ扱いかァァァ!!」
宇宙戦艦綾乃って……どんなネーミングセンスだよ。
「お登勢ってのは夜の名…いわば源氏名よ。私の本名は寺田綾乃っていうんだィ」
やる気をなくしたような顔をする二人。
「なに嫌そーな顔してんだコラァァァ!!」
その時、スナックの電話が鳴った。新八からだそうで、どうやらおじーさんがヤバイらしい。
「よし、いくか」
『どこに?』
「決まってんだろ、大江戸病院だ」
『どうやって?普通に行っても少し時間かかっちゃうよ?』
「コイツを使うのさ」
ニヤリと笑う銀時の視線の先には定春が。
『………え?それってつまり…定春に乗るってこと?』
「ああ。ほら早く乗れ。神楽もバーさんも乗ったんだからよ」
いやいやいやいや!
『重いでしょ!?』
「バッカおめー大丈夫だよ。早くしろ」
銀時に抱えられ定春の上に乗る。銀時も乗って出発した。
病室の窓を割って中に入る。ヤベェ、何度か意識飛んだ。何か軽い走馬灯見てたよーな……いや、気のせいだよね。気のせいだと思いたい。
『おじーさん、まだ死ぬなよ』
ボコッと殴る。こうでもしないとすぐ逝っちまいそうだからね。医者に何やってんのとか言われたけど回し蹴りして床に沈めた。
「かんざしはキッチリ返したからな…見えるか、ジーさん?」
「(…ああ、見えるともさ)」
おじーさんは酸素マスクを外す。
「…綾乃さん。アンタやっぱ…かんざしよく似合うなァ…」
ありがとう、と聞こえた気がした。
***
帰り道。
「…バーさんよォ、アンタひょっとして覚えてたってことはねーよな?」
「フン、さあね」
しゃらん、とかんざしを鳴らす。
「さてと…団子でも食べにいくとするかィ」
ん?今…、
「ん…ああ」
お登勢さんが綾乃さんに見えた気がしたけど…気のせいか。
完
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