▼ 疲れた時は酸っぱいものを
『いってぇぇ〜っ』
ん?何か頭から生温かいものが……あ、血だ。
『………ん?』
身体中が痛いので起き上がることができない。つーか車が何であんの?あ、もしかしてもしかしなくてもあたし達引かれちゃったカンジ?え、ウソ、え、マジ?
「じぃィィィィィィ!!なんということをををを!!」
「落ちつきなされ皇子!!とりあえず私めがタイムマシンを探してくるので!」
「じぃぃぃぃぃぃ!!お前が落ちつけェェ!!」
じい(仮)は車のワゴンの中に入ろうとしていた。
「ん?こっ…これはなんということだ」
「どうされました皇子。タイムマシンが見つかりましたか!!」
「ちげェェェ クソジジィ!!これを見よ!!」
そう言って皇子(仮)の目線の先には定春がいた。
「これは…狛神!?なぜこのような珍種が…」
「じぃ、縄はあるか!?」
「こんなことしていいんですか、皇子?私らただのチンピラですな」
「これは保護だ。こんな貴重な生物を野放しにはできん!」
縄を使って定春を車に縛り付けるじい(仮)。
「ゆくぞ。クククク、またコレクションが増えちゃった」
車が発車すると同時にあたしは起き上がる。そして隣にいる銀時に声をかける。
『どーすんの、銀時』
「………」
無言で立ち上がる銀時。それで銀時の行動を理解したあたしは銀時を追うように走り出す。
***
車の窓ガラスにへばりつく銀時。あたしは定春の毛の感触を味わいながら『車止めろボケ殺すぞコラ』と言った。
「こいつは勘弁したってくれや。アイツ、相当気に入ってるみてーなんだ」
「何を訳のわからんことを。どけェ!!前見えねーんだよ、チクショッ」
「うオオオオオオ!!」
ドドドド…と後ろから音が聞こえ、振り返るとものすごいスピードで神楽が走ってきていた。
「定春返せェェェェェ!!」
「誰だ定春って!?」
「くっ…来るなァァァ!!」
じい(仮)は銃を構える。
「ほァちゃアアアア!!」
神楽が番傘を野球バットのように構え、車を打った。
同時に「あ」と声をもらす神楽。大方、定春が乗ってたのを忘れてたのだろう。
「定春ゥゥゥゥゥゥ!!」
川に沈む車。神楽は道路に膝と手をつき涙を流す。
「私…また同じこと繰り返してしまったヨ」
「お嬢さん」
『何がそんなに悲しいの?』
神楽があたし達の声に反応して顔をあげる。あたしと銀時と定春は木の上にいた。銀時は定春のあごをなでるが噛まれ「ぎぃやぁぁぁぁ!!」と悲鳴をあげる。ドンマイ。
「銀ちゃん、風香、定春!!」
定春は木から飛び降り、神楽の元へ向かった。神楽は定春に抱きつく。
「定春ゥゥゥ!!よかった、ホントよかったヨ!!」
腕噛まれてるけど。
「銀ちゃん、飼うの反対してたのになんで」
「俺ァしらねーよ。面倒見んならてめーで見な。オメーの給料からそいつのエサ代キッチリ引いとくからな」
銀時は歩き出す。
「…アリガト銀ちゃん。給料なんてもらったことないけど」
それはそれでどうなんだ。
***
銀時は万事屋に帰り、あたしはかぶき町をぶらぶら歩く。時間を確認するために携帯を開く。
『あ』
見廻りの時間、フツーに終わってる。
完
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